皮膚のかゆみや赤みなど肌トラブルで病院に受診した時に、『リンデロンVG』を処方された経験をお持ちの方は多いのではないでしょうか。実はドラッグストアや薬局など市販でも『リンデロン』と名が付けられている商品が販売されています。今回は市販薬『リンデロンVs』が医療用医薬品のリンデロンVGの代用になるのか、効果や特徴を解説します。
医療用医薬品『リンデロンVG』とは
湿疹や皮膚炎などの肌トラブルで使われる『リンデロンVG』は医療用医薬品に分類され、病院から処方されるお薬です。軟膏、クリーム、ローションの3種類があり、抗生物質(ゲンタマイシン硫酸塩)とステロイド(ベタメタゾン吉草酸エステル)を配合した塗り薬です。
抗生物質は細菌をやっつける働きがあり、感染を防ぐことができます。皮膚がジュクジュクしていたり、細菌感染が疑われる際に使用します。
ステロイドの働きや種類については以下の項目で詳しく解説しています。
ステロイドについて
ステロイドとはもともとからだの副腎(ふくじん)で作られているホルモンの1種で、このホルモンが持つ働きを応用して作られたのが、ステロイド薬(合成副腎皮質ホルモン薬)です。
ステロイド薬には炎症を抑える作用(抗炎症作用)や血管を収縮させてかゆみを抑える働きなどさまざまな作用をもつ薬です。塗り薬以外にも飲み薬や注射薬も医療現場で使われています。
またステロイド薬は効き目の強さによって5段階にランクに分けられています。ステロイドのランクは以下に簡単にまとめています。
作用の強さ | 市販薬での販売 |
最も強い(strongest) | × |
とても強い(very strong) | × |
強い(strong) | ◯ |
普通(medium) | ◯ |
弱い(weak) | ◯ |
市販ではstrong〜weakランクのステロイドが販売されており、very strong、strongestランクのステロイドは医療用(病院)のみの扱いになっています。
ほかのリンデロン製品
医療用医薬品のリンデロンには他にもリンデロンV、リンデロンDP、リンデロンAがあります。ステロイドの強さや抗生物質の有無によって種類が異なるため、以下を参考にしてください。
商品名 | 成分 | ランク |
リンデロンVG | ベタメタゾン吉草酸エステルゲンタマイシン硫酸塩 | 強い(strong) |
リンデロンV | ベタメタゾン吉草酸エステル | 強い(strong) |
リンデロンDP | ベタメタゾンジプロピオン酸エステル | とても強い(very strong) |
リンデロンA(点眼・点鼻用) | ベタメタゾンリン酸エステルナトリウムブラジオマイシン硫酸塩 | 弱い(weak) |
市販薬『リンデロンVs』とは
『リンデロンVs』はシオノギ製薬が発売しているステロイド薬で、ドラッグストアやインターネットなどで購入ができる市販薬です。
成分にベタメタゾン吉草酸エステルを配合した商品で、ステロイドのランク(強さ)はstrongランクに位置付けられます。
strongランクは市販のステロイド薬の中では一番高いランクのステロイドです。
軟膏、クリーム、ローションの違い
『リンデロンVs』は軟膏、クリーム、ローションの3種類が販売されています。それぞれの特徴をふまえて、ご自身のお肌の状態に合った剤型を選ぶことが大切です。
剤型 | 長所 | 短所 |
軟膏 | ・刺激が少ない・保湿力が高く、皮膚を保護する | ・ベタつきがある |
クリーム | ・伸びが良くベタつきにくい | ・軟膏に比べ、刺激が強い・ジュクジュクした患部・傷には適さない |
ローション | ・軟膏やクリームよりベタつきにくい・軟膏やクリームが塗りにくい頭皮などの有毛部に適する | ・軟膏に比べ、刺激が強い・ジュクジュクした患部・傷には適さない |
効果と副作用
リンデロンVsはステロイドの抗炎症作用によって、さまざまな皮膚トラブルに対応できます。湿疹や皮膚炎をはじめ、あせも、かぶれ、かゆみ、しもやけ、虫さされ、じんましんにも使用できます。
皮膚トラブルを早く治すには、赤みやかゆみなどの原因である炎症をしっかり抑えることが大切です。炎症を十分に抑えることで、症状の悪化や長期化、慢性化を防ぐことができます。
ステロイド薬の副作用としては、まれに以下のような症状が出ることがあります。
・薬を塗った部分に毛が生える/増える
・にきびやおできができやすくなる/悪化する
・血管が目立ってくる
・細菌・真菌・ウイルスによる感染症
・皮膚がうすくなる/赤くなる
・かぶれ
など副作用が出た場合は使用を中止し、医師や薬剤師、登録販売者に相談しましょう。
リンデロンVsとリンデロンVgの違い
市販薬であるリンデロンVsと医療用医薬品のリンデロンVgのちがいは『抗生物質』が配合されているかどうかがポイントになります。
市販薬であるリンデロンVsにはステロイド成分のベタメタゾン吉草酸エステルが1g中に1.2mg配合されていますが、抗生物質は配合されていません。
一方、医療用医薬品のリンデロンVgにはステロイド成分のベタメタゾン吉草酸エステルに加え、抗生物質のゲンタマイシン硫酸塩を配合しています。
抗生物質には細菌をやっつける働きがあり、感染を防ぐことができるため、皮膚がジュクジュクしていたり、細菌感染が疑われる際に使用します。
つまりリンデロンVsとリンデロンVgには同じステロイド成分が同量配合されていますが、抗生物質はリンデロンVgのみに配合されています。
リンデロンVsはリンデロンVの代用になる
市販薬であるリンデロンVsは医療用医薬品のリンデロンVの代用になります。
なぜならリンデロンVsとリンデロンVはどちらも「ベタメタゾン吉草酸エステル」を1g中に1.2mg配合しており、同じ成分が同じ濃度で含まれているからです。
一方でリンデロンVsはリンデロンVGの代用にはなりません。リンデロンVGの場合、配合されているステロイドは市販薬のリンデロンVsと同じですが、抗生物質のゲンタマイシン硫酸塩も配合されているためです。
病院にかかる時間がないなど、緊急で対応しなければならない場合は市販のリンデロンVsを選択肢のひとつとして活用してみてください。ただし、5~6日間使用しても症状が治まらない場合は必ず医療機関へ受診しましょう。
リンデロンVsで対応できる皮膚症状
リンデロンVsはさまざまな皮膚トラブルに対応できます。
【対応できる皮膚トラブル】
・湿疹
・皮膚炎
・あせも
・かぶれ
・かゆみ
・しもやけ
・虫さされ
・じんましん
使い方には注意!自己判断を間違えないためのポイント
優れた抗炎症作用で湿疹やかゆみなどさまざまな皮膚トラブルに対応できるリンデロンVsですが、症状や使い方によっては思わぬトラブルも引き起こすことがあります。
正しくリンデロンVsを使用するためのポイントを知っておきましょう。
【使用できる部位】顔や陰部には使ってもよい?
顔や陰部(デリケートゾーン)には広範囲に使用しないようにしましょう。広範囲とは500円玉を超える大きさが目安になります。顔や陰部は皮膚が薄く、薬が吸収されやすくなるためです。陰部(デリケートゾーン)に使用する際は、粘膜部分に使用しないようにしましょう。
【使用年齢】子どもに使える?
リンデロンVsに年齢制限はありません。しかし乳幼児の皮膚はデリケートで薬が吸収されやすいため、使用量や使用期間には注意が必要です。
【皮膚症状】塗ってはいけない場所はある?
リンデロンVsはさまざまな皮膚トラブルに対応できる一方で、すべての皮膚トラブルを解決できるわけではありません。
例えば、以下のような皮膚トラブルや皮膚の状態には使用ができません。
・水痘(水ぼうそう)
・水虫・たむし
・化膿している皮膚
・目および目の周囲
・にきび
・おでき
特に細菌感染やウイルス感染によって症状が出ている時に、ステロイドを使用してしまうと、症状が悪化してしまうことがあります。
「虫にさされた」「ネックレスでかぶれた」など皮膚トラブルの原因がはっきりわかっていれば対応できますが、原因がよくわからない場合や判断に迷う場合は皮膚科に相談してみましょう。
リンデロンVGと成分が似た市販薬
ではリンデロンVGの代わりになる市販薬はあるのでしょうか。
リンデロンVGはstrongランクのステロイド成分『ベタメタゾン吉草酸エステル』に加え、抗生物質を配合した塗り薬です。
ここではリンデロンVGと同じ、strongランクのステロイド成分と抗生物質を配合した市販薬を紹介します。
ベトネベートN軟膏AS
第一三共ヘルスケアが販売するステロイド薬で、リンデロンVGと同じ『ベタメタゾン吉草酸エステル』を配合しています。
また抗生物質の『ブラジオマイシン硫酸塩』も配合しているため、化膿をしている湿疹や皮膚炎などの皮膚トラブルに効果的な塗り薬です。
フルコートf
田辺三菱製薬が発売しているステロイド薬で成分は『フルオシノロンアセトニド』を配合していますが、リンデロンVGと同じstrongランクのステロイド成分です。
また抗生物質の『ブラジオマイシン硫酸塩』も配合しているため、化膿をしている湿疹や皮膚炎などの皮膚トラブルに効果的な塗り薬です。
市販薬の値段はいくら?
では実際リンデロンVsをはじめとしたステロイド薬の値段はいくらなのでしょうか?それぞれの値段を以下にまとめました。
リンデロンVs
リンデロンVs クリーム 10g | 2,178(税込) |
リンデロンVs 軟膏 10g | 2,178(税込) |
リンデロンVs ローション 10g | 2,178(税込) |
※シオノギヘルスケアONLINEより(2024.3月時点)
ベトネベートN軟膏AS
ベトネベートN軟膏AS 5g | 1,155(税込) |
ベトネベートN軟膏AS 10g | 2,090(税込) |
※第一三共ヘルスケア公式サイトより(2024.3月時点)
フルコートf
フルコートf 5g | 1,078(税込) |
フルコートf 10g | 1,980(税込) |
※田辺三菱製薬公式サイトより(2024.3月時点)
まとめ
市販薬のリンデロンVsは湿疹や皮膚炎などさまざまな皮膚トラブルに対応でき、医療用のリンデロンVと同じ成分を同じ濃度で配合した商品です。
ステロイドの優れた抗炎症作用によって、赤みやかゆみなどに効果的である反面、使用してはいけない症状や場所があります。
まずはご自身の皮膚トラブルの原因や症状をしっかり見極めることが大切です。もし原因や判断に迷う場合には遠慮せずに皮膚科に相談してみましょう。
参考文献
リンデロンVG/添付文書
https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/2647709M1102_2_03/
リンデロンVs/シオノギヘルスケア
https://www.shionogi-hc.co.jp/rinderon.html
ベトネベートN軟膏AS/第一三共ヘルスケア
https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/products/details/betnevate_n/
フルコートf/田辺三菱製薬
https://hc.mt-pharma.co.jp/site_flucort/
執筆者 / ファクトチェック / 監修者
Yosuke Fukuoka
【薬剤師】ドラッグストア薬剤師を4年間経験。その後、本社教育部門にて市販薬セミナーの講師を務める。広告やパッケージに惑わされないお薬選びのコツを「わかりやすく」伝えられるよう、日々の執筆を行っています。
Nobuhiro Nagao
病院薬剤師として6年勤務。主にがん領域を経験。
現在は調剤薬局にて経営者かつ薬剤師として地域の健康サポートに取り組んでいます。
また、webライターとしてOTCやセルフメディケーションについて正しい医療情報を発信し、悩みを解消できる記事作成に励んでいます。
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