腰が痛いと聞いて連想する治療法は何でしょうか。湿布であったり、塗り薬であったり、はたまたサポーターをイメージする方もいらっしゃるでしょう。今回は腰痛時における湿布の選び方や注意点について解説します。
そもそも腰痛に湿布は効くの?
腰痛を治すのではなく痛みを和らげる
腰痛とは正確な病名ではなく、体に現れる症状を指します。腰痛の原因には様々なものが考えられますが、腰痛の85%は正確な原因を特定できないといわれています。
湿布には腰痛の原因を治すという作用はなく、痛みの原因となる炎症を鎮めることで痛みを和らげる作用が期待されています.
湿布には鎮痛成分が配合されている
通常、腰痛に使用される湿布には消炎鎮痛成分が配合されています。この成分が痛みの原因となる炎症を鎮め、辛い腰痛に対して効果を実感することができるのです。
あなたの腰痛はどれ?湿布の種類と選び方
湿布には温湿布と冷湿布の二種類があることをご存じですか。
どちらの湿布も消炎鎮痛成分が配合されいるため、薬としての効果は同様であることがほとんどです。一般的な痛みに対しては、「どちらが気持ちよく感じるか」で使い分けることが良いといわれています。
温湿布と冷湿布の違いを考慮し、自身に合っていると思うお薬を選択してください。
温湿布
温湿布は血行の改善/鎮痛を目的として使用される湿布で、血流を良くすることで、薬効成分を効果的に患部へ届けることで関節・筋肉での鎮痛効果を発揮します。
適した人
肩こりや腰痛・神経痛などの慢性的な痛みを和らげたい方に効果的です。温湿布に含まれる成分が血管を広げるため、貼付部位が温かく感じます。お風呂に入っている時に痛みが和らぐ方におすすめします。
冷湿布
冷湿布は主に炎症・痛みの抑制を目的とした湿布で、抗炎症作用や鎮痛作用を発揮します。アイシング目的で冷湿布は使用しないということに注意が必要です.
けがをした際の急性処置としてアイシングを行う方も多いでしょう。しかしながら、冷湿布はアイシングの代わりにはなりません。
あくまで人の肌に触れて,冷たく感じるだけです。アイシングを行う際は冷湿布ではなく、氷嚢や冷却まくら、コールドスプレーなどアイシングに適したものを使用してください。
適した人
冷湿布は筋肉痛やぎっくり腰・ねんざなど、急性の痛みを和らげたい方に効果的です。炎症がある・腫れている・患部が熱を持っている時は冷たい冷湿布をおすすめします。
剤形の選択も快適に使うポイント
湿布には『テープ剤』と『パップ剤』の異なる剤形があることをご存じですか。
どちらも消炎鎮痛成分が配合されており、痛みを和らげる作用が期待されますが、患部の状態や個々の肌質によって使い分けることができます。
テープ剤
テープ剤は伸縮性のある基材に有効成分や接着剤、香料などの添加物が塗布されています。
テープ剤の特徴は薄くて伸縮性があり、比較的粘着力が強いことです。
また、テープ剤の多くは、その表面が肌色になっていることが多く、貼っていても目立ちにくいという特徴があります。
パップ剤
パップ剤は基材として伸縮性が低い不織布が使用され、有効成分や水を含む軟膏が塗布されています。
パップ剤の特徴は、水が含まれていることで使用時に冷たく感じること、テープ剤と比較して厚みがあることです。
また、パップ剤は比較的粘着力が弱いため、皮膚への刺激が少なく、水分による保湿効果と相まって皮膚症状が起こりにくいと考えられます。
湿布を使う際の注意点
湿布を使用する際にはいくつかの注意点があります。光線過敏症のように、時には重大な副作用につながる恐れがあるため、自分が使用するお薬のことをよく知り、正しく使用しましょう。
かぶれや光線過敏症に注意
湿布を使用する際にはかぶれや光線過敏症に注意が必要です。
粘着性の高いテープ剤などを使用していたり、同じ場所に長時間湿布を使用していることでかぶれたりすることがあります。
湿布をはがす際にはゆっくりはがすことで皮膚にかかる負担を減らすことや、かゆみがあったとしても搔いたりしないことが大切です。
湿布に使用される有効成分の中には光にあたることで、人体に有害な作用を引き起こすものがあります。湿布を使用する際には、患部を布で覆ったり、サポーターを使用するなど直射日光に当てないことが大切です。
痛みが続く場合は医療機関へ受診しましょう
腰痛が長く続く場合には一度医療機関を受診しましょう。「筋肉や関節からくる腰痛だと思っていたら、内科系の疾患が見つかった」なんてこともあるそうです。
痛みが強かったり、長く続く際には医療機関を受診しましょう。
腰痛を予防するために日常生活でできること
腰痛の原因は様々ですが、同じ姿勢を長時間続けていたり、重いものを持ち上げることが腰痛につながると言われています。
つらい痛みに発展する前に、生活の中にある腰痛の原因を取り除いていきましょう。
運動やストレッチで筋肉にアプローチ
筋肉が過度に緊張していると腰痛につながる恐れがあります。運動やストレッチで筋肉に刺激をあたえ、柔軟性を高めましょう。
腰痛を予防する運動としては、ウォーキングや水泳といった有酸素運動があげられます。
筋肉に対して軽度から中程度の負荷をかけることで、背骨や腰を支える筋肉を刺激します。筋肉の柔軟性を保つために日々適度な運動を心掛けましょう。
日々の姿勢をチェック
腰痛予防には日々の姿勢も大切です。長時間のデスクワークなどで猫背を続けるなど、腰に負担となる姿勢は腰痛の原因となります。良い基本姿勢を身に着け、腰痛を予防しましょう。
悪い姿勢
1.猫背
2.背もたれに寄りかかる
3.腰を反った姿勢
良い姿勢
1.あごを引く
2.背筋を伸ばす
3.腰と足の付け根が直角になるように深く座る。
まとめ
今回は腰痛に使用する湿布の種類と注意点について解説しました。
湿布には『温湿布』と『冷湿布』の二種類があり、自分の症状・好みに併せて選択することができます。また、剤形には『テープ剤』と『パップ剤』があり、貼付場所や使用方法によって適したものを使用することができます。
湿布は飲み薬などとは異なり、局所作用を目的とした医薬品であるため、全身的な副作用は少ないことが考えられます。しかしながら、湿布にはかぶれや光線過敏症などを引き起こすリスクが存在します。
ご自身が使用する薬のことをよく理解し、正しくお使いください。
参考資料
・腰痛は湿布で改善できる?気になる効き目や効果的な貼り方をご紹介|医療法人メディカルフロンティア
・冷湿布と温湿布の使い分け | 健康インフォメーション | 社会医療法人 将道会 総合南東北病院 宮城県岩沼市救急指定病院
・腰痛の予防|くすりと健康の情報局|第一三共ヘルスケア
・テープ剤とパップ剤の使い分け|消炎鎮痛.com|帝国製薬株式会社
執筆者 / ファクトチェック / 監修者
Ryo Omura
医療編集プロダクションMEDW 代表
株式会社TENTIAL メディアディレクター、リーガルチェック
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Yosuke Fukuoka
【薬剤師】ドラッグストア薬剤師を4年間経験。その後、本社教育部門にて市販薬セミナーの講師を務める。広告やパッケージに惑わされないお薬選びのコツを「わかりやすく」伝えられるよう、日々の執筆を行っています。