新型コロナウイルスに対するワクチン接種が日本でも始まり、ワクチンが身近になってきていると思います。一方で、ワクチンを接種した後に発熱や痛みなどの副反応が起きたという報告があり、不安を感じている方も多いのではないでしょうか?
これらの副反応に対してはアセトアミノフェンだけでなく、他の解熱鎮痛剤も服用できます。今回は、ワクチン接種後の発熱や痛みに対して使える解熱鎮痛剤について、情報を整理しながら解説していきます。
副反応が起こりやすいタイミングは?
日本で現在行われているファイザー社製ワクチンを接種した約2万人を対象とした調査では、発熱・接種部位の痛み・頭痛などが新型コロナウイルスワクチンを接種した後に起きたことが報告されています(2021年6月23日時点)。さらに、2回目の接種から1週間までの間で、接種の翌日に副反応が起きた人の割合が最も高いという報告があります。
また、日本ではファイザー社製の他にモデルナ社製のワクチンを公的接種に使用しています。モデルナ社製ワクチンはまだ日本人を対象とした調査が十分に行われていませんが、アメリカの疾患対策予防センター(CDC: Centers for Disease Control and Prevention)の報告から、ファイザー社製ワクチンと同様に1回目より2回目の接種後に発熱や頭痛が起きやすいことが分かっています。
以上をまとめると、ファイザー社製とモデルナ社製ワクチンのいずれも、2回目を接種した後に副反応が起こりやすく、さらにファイザー社製ワクチンの場合は接種した翌日に副反応が起きた人の割合が最も高い傾向があることが分かっています。
表1. ファイザー社製ワクチン接種後の主な副反応が起きる割合(接種から1週間後まで)
1回目(19,742人) | 2回目(19,414人) | |
発熱(37.5℃以上) | 3.3% | 38.4% |
接種部位の痛み | 92.2% | 90.2% |
頭痛 | 21.4% | 53.6% |
参考:新型コロナワクチンの投与開始初期の重点的調査(コホート調査)第9版
ワクチンの副反応に解熱鎮痛剤は使って良い?
先ほどは、新型コロナウイルスに対するワクチンを接種した後に発熱や頭痛が起きることがあると説明しました。発熱や頭痛と聞くと、「解熱鎮痛剤を服用すればよいのでは?」と考える方が多いと思いますが、果たしてワクチン接種によって起きた発熱・頭痛にも解熱鎮痛剤を服用して良いのでしょうか?
結論から言うと、ワクチン接種後に起きた発熱・頭痛に対して解熱鎮痛剤を服用できます。
ファイザー社製ワクチンの開発に関する臨床試験ではワクチン接種後に解熱鎮痛剤の使用が認められており、16-55歳の被験者のうち45%が2回目を接種後に服用していました。また、厚生労働省やCDCからはワクチン接種後の発熱や痛みに対して解熱鎮痛剤を服用できると発表しています。
解熱鎮痛剤の服用に関する注意点は?
ワクチン接種後の副反応に対して解熱鎮痛剤の服用を検討するときは、特に以下の点に注意してください。
- アセトアミノフェン以外の解熱鎮痛剤も服用できる
- 症状が出てから服用する
- 長期間の服用は避ける
アセトアミノフェン以外の解熱鎮痛剤も服用できる
厚生労働省はアセトアミノフェン以外にイブプロフェンやロキソプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs: Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs)も使用できると発表しています。
日本で現在実施されている調査では、ファイザー社製ワクチン接種後に服用した解熱鎮痛剤としてアセトアミノフェン・ロキソプロフェン・イブプロフェン・ジクロフェナク・アスピリンが挙げられています。
表2. ファイザー社製ワクチン接種後に服用された解熱鎮痛剤
1回目(19,731人) | 2回目(19,364人) | |
アセトアミノフェン | 3.51% | 12.93% |
ロキソプロフェン | 0.73% | 1.91% |
イブプロフェン | 0.05% | 0.10% |
ジクロフェナク | 0.02% | 0.07% |
アスピリン | 0.01% | – |
参考:新型コロナワクチンの投与開始初期の重点的調査(コホート調査)第9版
症状が出てから服用する
厚生労働省からの発表の通り、ワクチン接種後から症状が出るまでの間に予防的に解熱鎮痛剤を服用することは推奨されていません。一般に、解熱鎮痛剤の服用は出た症状を抑える対症療法であるため、予防的に服用しても効果が期待できないばかりかむやみに薬を服用していると思わぬ副作用を引き起こす可能性があります。
長期間の服用は避ける
ワクチン接種後の服用に限らず、一般に市販薬の長期間服用は避けてください。
また、臨床試験や今までの調査では、ワクチン接種の翌日を発熱や痛みのピークとして、その後数日で症状は回復していく傾向が認められています。解熱鎮痛剤を長期間服用しなければならない状況は、ワクチン接種後の免疫反応による発熱や痛みではない可能性があるため、病院を受診してください。
それ以外にも、薬などによりアレルギー症状やぜんそくを起こしたことがある場合や、現在他の薬を飲んでいる場合、妊娠中、授乳中、ご高齢、胃・十二指腸潰瘍や腎機能が低下など病気の治療中の場合は市販薬を購入する前に医師や薬剤師に相談してください。
まとめ
今回は新型コロナウイルスに対するワクチンを接種した後に起こりやすい副反応と、副反応が起きたときに服用できる解熱鎮痛剤について詳しく解説しました。
現時点の情報では、2回目のワクチン接種後に発熱や痛みが起こりやすいものの、症状は数日で改善すること、さらに発熱や痛みに対してはアセトアミノフェンやNSAIDsといった解熱鎮痛剤を服用できます。予防的な服用は推奨されていませんが、ワクチン接種後に発熱や痛みが起きた場合は、我慢せずに解熱鎮痛剤の服用を検討してみてはいかがでしょうか。
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参考資料
・新型コロナワクチンの投与開始初期の重点的調査(コホート調査)について 中間報告(2021.6.23現在)|順天堂大学医学部附属順天堂医院臨床研究・治験センター
・Johanna Chapin-Bardales et al., Reactogenicity Following Receipt of mRNA-Based COVID-19 Vaccines. JAMA., 325(21): 2201-2202 (2021).
・ワクチンを受けた後の発熱や痛みに対し、市販の解熱鎮痛薬を飲んでもよいですか。|新型コロナワクチンQ&A|厚生労働省
・Vaccines & Immunizations COVID-19 Vaccines|CDC
・Fernando P Polack et al., Safety and Efficacy of the BNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine. N. Engl. J. Med., 383(27): 2603-2615 (2020).
・Lindsey R Baden et al., Efficacy and Safety of the mRNA-1273 SARS-CoV-2 Vaccine. N. Engl. J. Med., 384(5): 403-416 (2021).
執筆者 / ファクトチェック / 監修者
Ryo Omura
医療編集プロダクションMEDW 代表
株式会社TENTIAL メディアディレクター、リーガルチェック
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Yosuke Fukuoka
【薬剤師】ドラッグストア薬剤師を4年間経験。その後、本社教育部門にて市販薬セミナーの講師を務める。広告やパッケージに惑わされないお薬選びのコツを「わかりやすく」伝えられるよう、日々の執筆を行っています。