特定保健用食品(トクホ)とは
特定保健用食品(以下トクホ)とは、
”からだの生理学的機能などに影響を与える保健効能成分(関与成分)を含み、その摂取により、特定の保健の目的が期待できる旨の表示(保健の用途の表示)をする食品です。”
引用 消費者庁ホームページ
もう少し、かみ砕いて見ていきましょう。
「食品」には3つの機能があります。
トクホは食品の持つこの三次機能に注目し、生活習慣の乱れに伴う健康上のリスクを低減するように工夫された食品です。
トクホはあくまで補助的な立ち位置であり、トクホだけに頼らず普段の食事の取り方やライフスタイルなど見直すことが必要です。
そのため、トクホの商品には 「食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。」などバランスの良い食生活を普及する文言の表示がなされています。
トクホのマーク
トクホとして販売するためには、食品ごとに食品の有効性や安全性について国の審査を受け、許可を得なければなりません。(健康増進法第43条第1項)
許可を受けた商品には以下の許可証票(トクホマーク)が表示されています。
2022年4月12日時点で1059品目がトクホとして販売されています。
機能性表示食品、栄養機能食品との違い
健康へのはたらきを表示できる保健機能食品にはトクホの他に「機能性表示食品」「栄養機能食品」があります。
トクホは食品ごとに効果や安全性に関する国の審査が必須です。
一方、機能性表示食品は国の基準値などの設定がなく、企業の責任において健康へのはたらきを表示できる点が大きな違いです。
また、栄養機能食品はすでに科学的な根拠が確認されたビタミンやミネラルなどの国が定めた栄養成分を基準量含んでいる場合に表示ができます。
より詳しい内容は「トクホ、機能性表示食品、栄養機能食品の違い」記事をご覧ください。
トクホはこのような方におすすめ
トクホの主な関与成分とはたらき
関与成分とは「健康を維持促進する効果」を発現し、体の調子を整えるはたらきのある成分のことです。主な関与成分とそのはたらきを用途ごとに見ていきましょう。
おなかの調子を整える食品
主な関与成分 | はたらき |
オリゴ糖類(大豆オリゴ糖、フラクトオリゴ糖など) | 善玉菌であるビフィズス菌のエサとなり、腸内のビフィズス菌を増やす |
乳酸菌類 | 善玉菌である乳酸菌を摂取することで腸内環境の改善 |
食物繊維類(難消化性デキストリン、小麦ふすまなど) | 便の排泄を促進、腸内で余分なコレステロールや糖分などの拡散や吸収を抑える |
コレステロールが高めの方の食品
主な関与成分 | はたらき |
大豆タンパク | 消化管内でコレステロールを吸着して排泄を促進したり、コレステロールから合成される胆汁酸の排泄を促進 |
キトサン | 消化管内でコレステロールから合成される胆汁酸と結合して便中に排泄させる |
茶カテキン | 消化管内で胆汁酸ミセル中のコレステロールと結合して、コレステロールの吸収を抑える |
セサミン・セサモリン | 肝臓でのコレステロール合成を抑制し、食物に含まれる体内への吸収を抑える |
血圧高めな方の食品
関与成分 | はたらき |
ペプチド | アンギオテンシン変換酵素(ACE)を阻害し、血圧をさげる |
杜仲葉配糖体 | 副交感神経を刺激して血管を広げて血圧を下げる |
γ-アミノ酪酸 | 血管収縮作用伝達物質のノルアドレナリンの分泌を抑えて血圧を下げる |
酢酸 | 血管を拡張し、血管抵抗が緩和されることにより血圧を下げる |
骨の健康が気になる方の食品
関与成分 | はたらき |
フラクトオリゴ糖 | 整腸作用により、腸内をカルシウムが吸収されやすい環境にする |
大豆イソフラボン | 骨からのカルシウムの溶出を防ぐことで骨密度、骨強度を高める |
ビタミンK2 | 骨にカルシウムを沈着させる機能をもつタンパク質(オステオカルシン)を活性化させ、骨形成を助ける |
・カルシウム(疾病リスク低減表示):カルシウムは医学的・栄養学的にも骨との関与が確立されており、「骨粗鬆症になるリスクを低減するするかもしれません」と具体的な疾病を表記することが認められた関与成分です。
歯の健康が気になる方の食品
関与成分 | はたらき |
パラチノース、キシリトールなど | 歯垢内で酸が生成されず、pHが低下しないため、虫歯菌の栄養素になりにくい糖質 |
茶ポリフェノール | 虫歯菌の1種であるミュータンス菌に対する増殖抑制作用 |
緑茶フッ素 | 歯の表面を改善し、虫歯菌の原因となる酸に溶けにくい状態にする |
歯茎の健康が気になる方の食品
関与成分 | はたらき |
カルシウムと大豆イソフラボン | 歯を支える歯槽骨の骨密度の増加を促進 |
ユーカリ抽出物 | 口内細菌の増殖抑制や口の中で歯垢をつくられにくくする、歯周病関連菌の増殖抑制 |
血糖値が気になる方の食品
関与成分 | はたらき |
難消化性デキストリン | 腸管壁から血液中への糖質の移行をおだやかにする |
グァバ葉ポリフェノール | 腸内で糖質を分解する消化酵素α-アミラーゼの働きを抑え、糖質の消化吸収をおだやかにする |
L-アラビノース | 腸内で砂糖の分解酵素シュクラーゼを阻害し、小腸内での砂糖の吸収率を下げる |
血中中性脂肪が気になる方の食品
関与成分 | はたらき |
グロビン蛋白分解物 | 食後の血中中性脂肪やレムナントとリポ蛋白の上昇をおさえる |
ベータコングリシン | 肝臓での脂肪の燃焼(β酸化)を促進し、脂肪の再合成を抑える、糞中への脂肪の直接排泄を促進する |
モノグリコシルへスぺリジン | 肝臓における脂肪酸合成系の抑制と脂肪酸β酸化系の亢進 |
ウーロン茶重合ポリフェノール | 膵リパーゼを阻害し、腸管からの脂肪吸収を抑制する |
難消化性デキストリン | 消化管での脂質の消化吸収を抑制し、脂質の一部を便とともに排泄させる |
体脂肪・内臓脂肪が気になる方の食品
関与成分 | はたらき |
中鎖脂肪酸 | 食べたあと肝臓で素早く消費されるため、一般的な油である長鎖脂肪酸より体脂肪になりにくい |
茶カテキン | 肝臓や筋肉での脂肪の分解・消費を促進し、余分な体の脂肪を減少しやすくさせる |
クロロゲン酸類 | 肝臓での脂肪の消費を促進し、余分な体の脂肪を減少しやすくさせる |
ガゼリ菌SP株 | リパーゼによる脂質の分解反応を進みにくくすることで食事由来の脂質の吸収を抑制する |
トクホは生活習慣の改善とともに利用しましょう
特定保健用食品(トクホ)の解説をしてきました。トクホは厳しい認定基準や国の審査を経て承認された食品であり、これは他の健康機能食品との大きな違いでもあります。
「トクホを活用したい」と思われる方は、どの用途の食品を選ぶかご自身の気になる健康と照らし合わせて考えてみましょう。また、現在の食生活(栄養の偏り、塩分の摂り過ぎなど)やライフスタイル(飲酒、喫煙、夜更かしなど)なども振り返りも必要です。
トクホは健康維持として補助的に活用し、生活習慣や健康への意識改善も同時に行っていきましょう。
参考資料
・特定保健用食品について|消費者庁
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_for_specified_health_uses/
・公益財団法人 日本健康・栄養食品協会
https://www.jhnfa.org/index.html
・健康の森|日本医師会
https://www.med.or.jp/forest/index.html
執筆者 / ファクトチェック / 監修者
Nobuhiro Nagao
病院薬剤師として6年勤務。主にがん領域を経験。
現在は調剤薬局にて経営者かつ薬剤師として地域の健康サポートに取り組んでいます。
また、webライターとしてOTCやセルフメディケーションについて正しい医療情報を発信し、悩みを解消できる記事作成に励んでいます。
一緒にセルフメディケーションについて知識を増やしていきましょう。
Yosuke Fukuoka
【薬剤師】ドラッグストア薬剤師を4年間経験。その後、本社教育部門にて市販薬セミナーの講師を務める。広告やパッケージに惑わされないお薬選びのコツを「わかりやすく」伝えられるよう、日々の執筆を行っています。