冬の唇は乾燥しやすく、カサつきや皮むけ、ひどい時には口角(上下の唇があわさるところ)がぱっくりと割れて痛みを伴う口角炎に悩まされている方も多いのではないでしょうか?
今回はこれらの唇のトラブルを1本で解決してくれる「モアリップ」の正しい効果や商品の特徴について解説します。
資生堂の「モアリップ」とは
モアリップとは資生堂薬品株式会社から発売されている医薬品(第3類医薬品)タイプのリップクリームです。5つの有効成分が配合されており、冬場の強い乾燥や最近ではマスクによって摩擦を受けた唇のただれ・ひびわれ、口角炎や口唇炎を改善する効果があります。
なおロート製薬から発売されているメンソレータムヒビプロLPやユースキン製薬から発売されているユースキンリリップキュアと同じ処方になります。
自主回収を経て再販売
モアリップは2022年6月に製品の自主回収を行いました。
理由はモアリップの有効成分の1つである「ピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)の含有量が時間が経つにつれて、承認規格より下回る可能性が確認されたため、販売時点では承認規格に適合していましたが、市場にあるすべてのモアリップを自主回収しました。
しかし、ピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)の含有量低下による健康被害が発生するおそれはなく、自主回収を経て2023年10月から販売を再開しています。
自主回収商品と再販売商品を見分けられるよう、再販売商品はケース底面の製造番号および使用期限が記載されているスペースの色を黒色、本体チューブに記載されている販売名モアリップNの文字色がピンク色に変更されています。
モアリップの効果
モアリップは口唇のひびわれ、口唇のただれ、口唇炎、口角炎に効果がある商品です。口唇炎や口角炎はなじみの少ない言葉なので、それぞれどんな病気なのか以下で解説します。
口唇炎
口唇炎とは唇全体に炎症や亀裂が起こる病気です。唇が全体的に乾燥し、皮がむけたり、赤くはれたりして、かゆみをともなう場合もあります。つまり簡単に表現すると唇が「荒れ」た状態のことを指します。
口角炎
口角(上下の唇があわさるところ)に炎症が起き、唇の端が赤く腫れた状態になり、唇の皮がむけたり、かさぶたになったりする病気です。口角炎になると、唇が乾燥したり、口角がぱっくり割れる(亀裂が入る)こともあります。食事や会話の際に口を大きくあけると口角が裂け、痛みをともないます。
口唇ヘルペスや口内炎に使えない
残念ながらモアリップは口唇ヘルペスには使えません。口唇ヘルペスは単純ヘルペスウイルスという「ウイルス」が原因によって起こる感染性の病気です。そのため口唇ヘルペスの治療にはウイルスをやっつける抗ウイルス薬を使います。モアリップはウイルスに対する薬ではないため、口唇ヘルペスには効果がありません。
口唇ヘルペスは口唇炎や口角炎に似た症状が出るため、間違えられやすいですが、症状のポイントとしてはくちびるやその周りに小さな水ぶくれが出るのが特徴です。もし唇やその周りにヒリヒリ・ピリピリする感じや水ぶくれがでてきた場合は口唇ヘルペスの可能性があるため、その場合はお医者様に相談してください。
また、一部SNSで「口内炎にも使える」という情報がありますが、モアリップは口内炎に対する効果をもっていないため使用できません。市販薬には口内炎に効能効果を持った、塗り薬や貼り薬、飲み薬があるのでそちらの商品を活用しましょう。
モアリップは5つの有効成分配合
モアリップには口唇のただれ・ひびわれ、口唇炎、口角炎を治すための有効成分が5つ配合されています。それぞれの働きについて以下に記載します。
グリチルレチン酸
モアリップには抗炎症成分のグリチルレチン酸が3mg(1g中)配合されています。唇の炎症を抑える働きがあります。
トコフェロール酢酸エステル(ビタミンE誘導体)
モアリップには血行促進成分のトコフェロール酢酸エステルが2mg(1g中)配合されています。唇の血行を良くすることで、皮膚の生まれ変わりを促す働きがあります。
アラントイン
モアリップには組織修復成分のアラントインが5mg(1g中)配合されています。荒れた唇の修復を促す働きがあります。
パンテノール
モアリップにはパンテノールが5mg(1g中)配合されています。皮膚や粘膜を健康に維持する働きがあります。
ピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)
モアリップにはピリドキシン塩酸塩が1mg(1g中)配合されています。皮膚や粘膜を健康に維持する働きがあります。
モアリップの特徴
実際の使用感
私は3年前からモアリップ を冬場になると愛用しています。写真のようにクリームをチューブから出した時は半透明ですが、なじませると透明に変わります。クリームは「やわらかめ」の使用感です。クリームは伸びがよく、ほどよいしっとり感とうるおい感があり、べたつきにくいのが特徴です。
そのためテクスチャーがしっとりうるおうタイプがお好きな方や添加物にlメントールを配合しているので、スースーとした清涼感がお好きな方におすすめです。剤形はチューブタイプですがそのまま唇に塗れるので、手が汚れる心配がありません。そのため外出時に気軽に使用することができます。
もし「かため」の使用感がお好みで、唇をしっかり保護したいリップをお探しの場合はロート製薬が発売している「ヒビプロLP」が該当しますので、下記の記事をご参考下さい。
ヒビプロLPに関してこちらにて解説しております。
>>ヒビプロLPはどの症状に使える?モアリップとの違いも解説
香り
無香料のため、香りはありません。リップの香りが気になる方におすすめです。
使用期限
未開封であれば、外箱に記載の期限までお使いいただけます。開封後の期限ははっきり決まっていませんが、未開封時よりも短くなります。購入時と比べて、中味の変色など異変がある場合は使用を中止してください。例えば、今年の冬に購入したものを来年の冬に使用したい場合、中味に異変がなければお使いいただけます。
※メーカー確認済み(2020/10)
薬剤師からのポイント
モアリップは普段使いNG!毎日は使わないように
モアリップは第3類医薬品です。医薬品というのは基本的に「病気の治療」を目的としたものです。あくまで口唇のただれ・ひびわれ、口唇炎、口角炎の症状が出ている時だけの使用にとどめ、5〜6日使用しても症状がよくならない場合は医師や薬剤師、登録販売者に相談してください。
また症状が出やすい冬場の時期は「普段使い用リップ」と「治療用リップ(モアリップなど)」の2本を準備しておくと良いでしょう。
リップクリームは「縦」方向に塗りましょう
リップクリームを横方向に塗っていた方も多いと思いますが、唇は縦の方向にシワができているので、横方向からだとシワの中までしっかりとクリームが入りません。そのためリップクリームは優しく「縦」方向に塗るようにしましょう。
こんな症状がある時は注意
口や唇のまわりが、ヒリヒリ・ピリピリした後に水ぶくれができた場合には口角炎ではなく口唇ヘルペスの可能性があります。口唇ヘルペスの場合は使用する薬が異なることや、初めての口唇ヘルペスは症状がひどく出る場合があるので、その時はお医者様に相談してください。
さいごに
モアリップは唇のただれ・ひびわれ、口角炎や口唇炎を改善する効果がある医薬品タイプのリップクリームで、5つの有効成分が唇の炎症を抑えながら、荒れた唇を修復することで唇のトラブルを改善してくれます。
モアリップのテクスチャーは「やわらかめ」の使用感で、クリームは伸びがよく、ほどよいしっとり感とうるおい感があり、べたつきにくいのが特徴です。
また剤形はチューブですが、唇に直接塗れるため、手を汚したくない方にも使用しやすいリップクリームです。
一方で口唇ヘルペスや口内炎には使用することができませんので、唇のまわりの水ぶくれや口の中のトラブルには効能にあった市販薬の選択や医師への相談も検討してみましょう。
モアリップに関するQ&A
Q.何歳から使用できますか?
A.モアリップは生後1ヶ月からご使用いただけます。
※メーカー確認済み(2020/10)
Q.使用できない部位はありますか?
A.口の中には使用できません。また湿潤やただれがひどい場合は医師や薬剤師、登録販売者にご相談ください。
Q.妊娠中・授乳中でも使用できますか?
A.モアリップは妊娠中・授乳中でもご使用いただけます。
※メーカー確認済み(2020/10)
ただし妊娠中は皮膚が過敏な時期の為、もし使用後に皮膚の赤みやブツブツなど異常を感じた場合は使用を中止してください。
Q.ステロイドは入っていますか?
A.モアリップにステロイド成分は配合していません。
Q.クリームが固まってうまく出ない時はどうすればいい?
A.手の中でチューブを温めてからお使いください。
Q.薬剤師や登録販売者による販売が必要?
A.登録販売者がいれば購入できます。
モアリップ は第3類医薬品です。薬剤師が不在でも、登録販売者のいるドラッグストアなどで購入できます。
Q.ECサイトなどネットで購入することはできる?
A.インターネットなどの通販サイトでの購入が可能です。
参考資料
・モアリップ(第3類医薬品)/資生堂-資生堂薬品株式会社
・「口角炎・口唇炎」の原因・症状について解説/ロート製薬
・口角炎について/岸本 麻子, 井野 千代徳, 多田 直樹, 井野 素子, 南 豊彦https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibi/56/3/56_3_101/_pdf/-char/ja
・口唇ヘルペス/皮膚症状一覧ひふ研-第一三共ヘルスケア
執筆者 / ファクトチェック / 監修者
Yosuke Fukuoka
【薬剤師】ドラッグストア薬剤師を4年間経験。その後、本社教育部門にて市販薬セミナーの講師を務める。広告やパッケージに惑わされないお薬選びのコツを「わかりやすく」伝えられるよう、日々の執筆を行っています。