冬になると、多くの女性を悩ませる症状の1つに「乾燥肌」があります。お肌が乾燥してしまうと「手あれ」や「かかとのガサつき」などさまざまな場所にトラブルが出てきます。
ドラッグストアなどには乾燥対策の保湿クリームがずらりと並んでいますが、種類が多く、正直「どれを選べばいいかわからない」こんな経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか?
今回は乾燥対策によく使われる「尿素配合 保湿クリームの正しい使い分け」について商品のタイプや尿素の働きを交えながら解説します。
そもそも「尿素」って何?
尿素は皮膚の水分蒸発や吸収、水分を保つ働きを持つ天然保湿因子(NMF)の主な成分の1つです。わかりやすく表現するとお肌にうるおいや、やわらかさ、なめらかさを与えてくれる成分です。身近なところでは化粧品や皮膚薬で使用されていますが、もともと身体(皮膚組織)の成分であることから毒性などの心配が少なく、安心して使用できます。尿素はお肌に対して、大きく2つの働きを持っています。
顔や肌に対する尿素の働き
角質層水分保持作用
簡単に言うと保湿作用です。尿素には角質の水分をしっかりとつかまえて、お肌の乾燥を防ぐ働きがあります。そのため、お肌に尿素を塗ることで、お肌をみずみずしい状態に保つことができます。
角質軟化作用
尿素の働きで意外と知られていないのが角質軟化作用です。冬の肌トラブルの1つに角化症と呼ばれる病気があります。「角化症」とは皮膚の角質層が硬く厚くなり、お肌がガサつく状態です。尿素にはこの角質軟化作用によりお肌の余分な角質を取り除き、お肌をやわらかく、なめらかにする働きがあります。
尿素はどんな症状に効果があるの?
尿素20%タイプは一般的に手指のあれ、ひじ・ひざ・かかと・くるぶしの角化症、老人の乾皮症、さめ肌を改善する効能効果があります。一方、尿素10%タイプ(指定医薬部外品)は一般的に手足のかさつき・あれの緩和をする効能効果があります。角化症やさめ肌はなじみが少ない言葉なので、下記で解説します。
角化症
角化症は皮膚の角質層(皮膚の一番外側の部分)が「厚くなる」「かたくなる」病気です。多くの病気の中でも皮膚が硬くなる病気の総称として角化症と呼びます。原因は遺伝的なものと外部の刺激によるものに大きく別れます。特に女性がイメージしやすいのが「かかと」の角化症で、かかとがカチカチに厚く・硬くなります。
さめ肌
さめ肌は皮膚の毛穴に「ブツブツ」とした発疹ができる病気で主に二の腕にできるのが特徴です。正式には毛孔性苔癬(もうこうせいたいせん)と呼ばれ、発疹は触ると「ザラザラ」とした感触ですが、痛みなどの自覚症状を伴うことはありません。二の腕以外に太もも、肩、背中、おしりにできることもあります。
尿素配合の保湿クリームってどんな商品があるの?
最近ではドラッグストア独自商品のPB(プライベートブランド)も発売されていますが、今回は有名メーカーが発売している尿素配合の代表商品を以下に記載してみました。各商品を詳しく知りたい!という方はページ最下部の商品ページを参考にしてください。
尿素配合保湿クリームは「尿素の含有量」や「+かゆみ止め」で分けられる
尿素20%タイプ
尿素の%濃度の違いは、『角質軟化作用』に影響します。一般的に尿素濃度が高いほど角質をやわらかくする働きは高くなります。つまり尿素20%タイプは尿素10%タイプに比べ、ひじ・ひざ・かかとなどの「硬さ」や「ガサつき」を改善したい方に適した商品です。
尿素10%タイプ
尿素10%タイプは、尿素20%タイプと比べ、皮膚をやわらかく、なめらかにする働きは弱くなりますが、保湿効果は基本的には変わりません。そのため、背中やうで、すねなどの広範囲の保湿ケアや手足のかさつき・あれを和らげたい方に適した商品です。
尿素+かゆみ止めタイプ
尿素にプラスで「かゆみ止め」を配合した代表的な商品は以下になります。湿疹薬にも使われる「かゆみ止め」成分が配合されているので、保湿ケアだけではなく「かゆみ」もしっかり改善したい方に適した商品です。
尿素配合保湿クリームを目的別で選ぶなら
硬さ・ガサつきが気になるなら「尿素20%」タイプ
尿素にはお肌のうるおいを保つ「角質層水分保持作用」とお肌をやわらかく、なめらかにする「角質軟化作用」がありました。角質軟化作用は一般的に尿素20%タイプの方が、尿素10%タイプに比べ高い効果を発揮します。
つまり、保湿だけでなく「ひじ」「ひざ」「かかと」などの角化(皮膚がかたく、ガサついた状態)をしっかりケアしたい方は尿素20%タイプがより適した商品になります。
家族で使うなら「尿素10%」タイプ
尿素20%タイプと尿素10%タイプの間で保湿効果の差は基本的にはありません。また尿素20%タイプの場合は使用年齢が15歳以上となっている場合がほとんですが尿素10%タイプの場合はお子様でもお使い頂けます。(メーカーにより年齢は異なる)つまりお肌の角化はそこまで気にならないが普段の保湿ケアとして使いたい方やお子様も一緒に使いたいと思われている方は尿素10%タイプがより適した商品になります。下記の商品が尿素10%配合商品になります。
かゆみをなんとかしたいなら「尿素+かゆみ止め」タイプ
先ほど紹介した尿素20%・10%タイプに、かゆみ止め成分は配合されていません。そのため、乾燥肌だけではなく、乾燥からくるしつこい「かゆみ」を改善したい場合は尿素だけでなく「かゆみ止め」成分が一緒に配合された商品を選びましょう。
尿素配合商品の注意点
顔への使用はしない
尿素は人によって、お肌の刺激感(ピリピリ感、ヒリヒリ感など)を感じる方もいらっしゃいます。また顔は他の部位に比べ、皮膚が薄く、刺激を感じやすい為、顔への使用は控えましょう。
敏感肌の方は注意が必要
尿素の刺激性により、しみたり、症状が悪化する可能性があるので敏感肌やアトピー肌、きず、あかぎれなどには使用しないようにしましょう。
使用年齢は必ず確認
尿素20%タイプは基本的に15歳以上からの使用になります。一方、尿素10%タイプの場合、例えばケラチナミン乳状液10は2歳以上から、フェルゼアクリームMは生後1ヶ月以上からとメーカーによって見解が異なる場合があります。その為、お子様が使う場合は商品ごとに使用年齢は必ず確認するようにしましょう。
薬剤師からのポイント
「目的」を明確にして、使い分けましょう
お肌の「硬さ」や「ガサつき」を改善したい方は尿素20%タイプが適してします。お肌の角化はそこまで気にならないが「普段の保湿ケア」として使いたい方や「お子様も一緒に使いたい」と思われている方は尿素10%タイプが適してします。乾燥からくるしつこい「かゆみ」を改善したい場合は尿素+かゆみ止めタイプを選びましょう。
さいごに
尿素配合の保湿クリームを選ぶ際は「目的」「使用部位」をはっきりさせることで、あなたのお悩みに合った商品を選ぶことができます。ただし、尿素配合商品は人によって刺激感(ピリピリ感)を感じる場合もあるので、その時は使用中止して医師、薬剤師又は登録販売者に相談してください。
参考資料
・花王(冬に手荒れが起きやすいのはなぜ?)
・角化症の原因・症状を解説/ロート製薬:商品情報サイト
・毛孔性苔癬の原因・症状を解説/ロート製薬:商品情報サイト
・ニプロ(「尿素」って何?)
執筆者 / ファクトチェック / 監修者
Yosuke Fukuoka
【薬剤師】ドラッグストア薬剤師を4年間経験。その後、本社教育部門にて市販薬セミナーの講師を務める。広告やパッケージに惑わされないお薬選びのコツを「わかりやすく」伝えられるよう、日々の執筆を行っています。