暑い日が続く中、さらにコロナ禍でステイホームの時間が増えた今、日光に当たる時間が少なくなり、気づかないうちにあなたもビタミンD不足になっているかもしれません。ビタミンDは、骨にとって重要な栄養素であり、不足するとこの先骨折など骨の病気を引き起こす恐れがあります。
そこでビタミンDを摂るためにはどのような食材を使えば良いか、またビタミンDの不足と過剰でおこる影響について、ビタミンDの重要性とともにご紹介していきたいと思います。
ビタミンDとは
ビタミンDは、骨の形成に関わる脂溶性のビタミンで、ビタミンD2~D7の6種類あるといわれています。しかし、ビタミンD4~D7は食品にはほとんど含まれていないことから、キノコ類に含まれるビタミンD2(エルゴカルシフェロール)と魚肉や魚類肝臓に含まれるビタミンD3(コレカルシフェロール)の2つに大別されます。
また、ビタミンDは食品から摂取する以外に、体内で生成する方法もあり、日光の紫外線による作用で皮膚から産生されます。
ビタミンDの働き
ビタミンDの主な働きとして、腸や肝臓でカルシウムやリンの吸収を促進する作用があります。カルシウムやリンは骨や歯を形成する時に必要なミネラルで、ビタミンDが欠乏すると、くる病や骨軟化症といった骨に関わる病気を引き起こす恐れがあります。
また、ビタミンDは体内に侵入した異物や細菌を捕らえて消化、攻撃するマクロファージやナチュラルキラー細胞の働きを調整して免疫機能への効果もあります。
1日あたりのビタミンD摂取基準量
日本人の食事摂取基準では、ビタミンDは日間変動が多いことや日照暴露による個人差があることを考慮して、成人男女の1日あたりの目安量を8.5μgと定めました。これは、鮭1切れや卵3〜4個ほどで満たすことができます。
また、外出する機会の少ない方や高齢者では、10~20μgの摂取を推奨しています。フレイル予防や骨粗鬆症予防のためにも高齢者は意識してビタミンDを摂取しましょう。
ビタミンDと日光の関係
上記でも少し紹介しましたが、ビタミンDは日光によっても産生されます。皮膚にあるプロビタミンD3という物質が、紫外線によってプレビタミンD3となります。そして、体温による熱異性化によりビタミンD3を生成するため、普段日光に浴びることが少ない方は食事で十分な量のビタミンDを摂取しなければなりません。
また、この作用は体内で調整されており、必要以上にビタミンDが産出されないようになっています。したがって、日照によるビタミンDの過剰症は考える必要はないため、積極的に日光に当たる時間を作りましょう。
ビタミンDの摂取量による影響
ビタミンDの摂取基準量(目安量)は、日光による産出量も考慮した値であるため、日照時間による地域差、個人差が多少あります。よって、日光に当たる機会が少ない方、特に高齢者はフレイル予防という点においても食事からのビタミンDの不足に注意しなければなりません。
摂取不足による影響
ビタミンDの摂取量が不足すると、乳幼児では肋骨や下肢の骨が変形するくる病や、成人では骨が石灰化する骨軟化症の発症リスクが高まることが報告されています。また高齢者や閉経後の女性においては、骨粗鬆症や骨折リスクが高まるため、ビタミンD欠乏にならないように摂取不足には注意しなければなりません。
他にもビタミンD不足は、免疫力低下につながり病気にかかりやすくなってしまう恐れがあります。しっかりとビタミンDを摂取するように心がけましょう。
摂り過ぎによる影響
一方で、ビタミンDの摂り過ぎは、高カルシウム血症や腎臓に負担をかけてしまう恐れがあります。高カルシウム血症になると、血管や腎臓、筋肉にカルシウムが沈着し軟組織の石灰化を起こしてしまいます。そうなると吐き気や口渇感、神経過敏や血圧異常などの体調不良をきたす恐れがあります。
また、腎臓にカルシウムが沈着した場合、腎不全や尿毒症という病気になる危険性もあります。そのため、日本人の食事摂取基準では1日に100μg以上の摂取をしないようにすることが定められています。
ビタミンDを多く含む食品
ビタミンDを多く含む食品として、魚類やキノコ類、卵、があります。魚類の中でもビタミンDが多く含まれているものとして、鮭1切れに25μg、サンマ1尾に11μg、カレイ1尾に20μg、特にアンコウや肝には多く含まれています。キノコ類では、干しシイタケやきくらげに多く含まれており30g当たり8μgほど含んでいます。
卵では、卵黄に多く含まれており、卵1個当たり2.5μg含まれております。また現在では、不足しがちなビタミンDを手軽に摂取できるサプリメントやビタミンDを多く含むシリアルなど栄養補助食品がたくさん売られているため、そうしたものを活用するのもおすすめです。
調理方法と簡単レシピ
ビタミンDは脂溶性ビタミンであるため、油に溶けてなじむ性質があります。そこでビタミンDを多く含む食材を油で炒める調理方法が最も効率よく摂取できます。また、魚料理は簡単にビタミンDを摂取できるため、魚料理以外で誰でも簡単にビタミンDを摂取できるレシピを紹介します。
※レシピ写真につきまして後日掲載いたします。
きくらげ炒め(1人分)
・ネギ:½本
・乾燥キクラゲ:8g
・乾燥春雨:適量
・卵:1個
・麺つゆ:30cc
・創味シャンタン:3g
①ネギを斜め切りにする。乾燥キクラゲと乾燥春雨は戻す
②ネギを多めの油で炒め、香りが立ってきたらキクラゲを加え、ごま油を追加し炒める。
③しんなりしてきたら春雨と溶き卵を加え、麺つゆと創味シャンタンを加え、味を整えて完成
キノコの和風マリネ(1人分)
・エリンギ:1パック
・舞茸:1パック
・バター:1片
・ごま油:小さじ1
・酒:小さじ1
・酢:小さじ1
・醤油:小さじ1
・ブラックペッパー:少々
①エリンギとマイタケを1口大に切る。
②バターとゴマ油をフライパンで熱し、エリンギとマイタケを炒める。
③しんなりしてきたら酒、お酢、醤油を加え、炒める。
④火を止め、ブラックペッパーを加えたら完成
超簡単!しらすサラダ(1人分)
・レタス¼玉
・卵2個
・釜揚げシラス30g
・マヨネーズ:小さじ1
・醤油:小さじ1
・酢:小さじ1
・砂糖:小さじ1
①レタスを食べやすい大きさにちぎる。
②ゆで卵の輪切りと釜揚げシラスを加え、マヨネーズ、醤油、お酢、砂糖を和えて完成
まとめ
ビタミンDは、食生活だけでなく生活習慣によっても不足する可能性があります。特に紫外線の作用により、皮膚でかなりの量のビタミンDが産生されるため、コロナ禍で外に出る機会が少なくな今、ビタミンDは食事で補うことが重要になってきます。そこで今一度、日常生活において可能な範囲内での適度な日照を心がけるとともに、食事によるビタミンDの習慣的な摂取を目指し、丈夫な体を作りましょう。
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参考資料
・日本人の食事摂取基準(2020年版)178-187
・Bischoff-Ferrari HA, Willett WC, Orav EJ, et al. A pooled analysis of vitamin D dose requirements for fracture prevention. N Engl J Med 2012; 367: 40─9.
・Bischoff-Ferrari HA, Willett WC, Wong JB, et al. Prevention of nonvertebral fractures with oral vitamin D and dose dependency: a meta-analysis of randomized controlled trials. Arch Intern Med 2009; 169: 551─61.
・骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会.骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2015 年版.ライフサイエンス出版,2015.
・日本食品標準成分表2020年版
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執筆者 / ファクトチェック / 監修者
Yuri Kido
大学で管理栄養士の資格を取り、現在は大学院にて肥満と糖尿病の研究をしています。医学と栄養の視点から健康をサポートしていきたいと思います。
Mizuki Ochiai
一般皮膚科・美容皮膚科勤務6年目 / 医師事務作業補助者 / 医療事務
現役皮膚科スタッフとしてお肌のトラブルや食物アレルギーなどを中心に管理栄養士の視点からわかりやすく有益な情報を発信していきます!