「風邪薬の種類が多くて、どれを選べばいいかわからない」と1度はこのような経験があるのではないでしょうか?発熱やのどの痛みなど風邪を引いた時はただでさえつらい状況なのに、正しく風邪薬を選ぶのは至難の技ですよね。今回は数ある風邪薬の中から自分の症状に合った風邪薬の正しい選び方について現役のドラッグストア薬剤師が解説します。
薬剤師からのポイント
いちばんつらい症状に特化した商品を選ぶ
市販の風邪薬はさまざまな症状に1つのお薬で対応できます。さらに、かぜのさまざまな症状だけでなくその中で一番つらい症状に十分な効果が発揮されるように配合成分や成分量を調整しています。そのため「のどの痛みが1番つらい」「鼻水をなんとかしたい」などご自身のつらい症状に合わせた風邪薬を選ぶことが大切です。
CMやパッケージだけで判断しない
風邪薬の選び方として「CMで見たことがあるから」「金色のパッケージで効きそうだから」などイメージや見た目で購入される方も非常に多いです。確かにCMを放映しているのは大手製薬メーカーが多く、安心感や信頼性は高いと思います。しかし風邪薬に限らず市販薬(OTC医薬品)の選び方として最も大切なのは『つらい症状を緩和できる成分を配合しているか』どうかです。CMやパッケージだけで判断せず、風邪薬の中身が自分の症状に合っているのかをしっかり見極めて選びましょう。
市販の風邪薬に含まれる主な成分
ここでは市販の風邪薬に含まれる代表的な成分の種類と働きについて説明します。成分の種類と働きを理解することで、ご自身のかぜ症状にはどの成分が必要なのかを明確にすることができます。
解熱・鎮痛成分
解熱・鎮痛成分とはかぜの代表的な症状である発熱やかぜの引き始めに多い関節痛、筋肉痛、頭痛などの痛みを緩和する成分です。以下が市販の風邪薬に使用される代表的な解熱鎮痛成分です。
【代表成分】
・アセトアミノフェン
・イブプロフェン
どちらも解熱・鎮痛効果がありますが、イブプロフェンにはのどの痛みの原因である炎症反応を抑える働きもあります。一方、アセトアミノフェンにはこの抗炎症作用はほとんどないといわれています。
また解熱作用を高める働きのある成分の1つに生薬があります。以下が発汗を促すことで解熱作用を高める代表的な生薬です。
【解熱作用を高める代表的な生薬】
・ショウキョウ
・ケイヒ
また解熱作用を高める働きのある成分の1つに生薬があります。以下が発汗を促すことで解熱作用を高める代表的な生薬です。
抗炎症成分
抗炎症成分として有名なのが、『トラネキサム酸』です。トラネキサム酸はプラスミンという物質の産生や増加を抑える働きがあります。プラスミンは炎症や痛みを引き起こす物質を誘発させる働きがあるため、のどの腫れや痛みの原因の1つといわれています。つまりトラネキサム酸はのど腫れや痛みのもとになるプラスミンを抑えることで、炎症を抑える働きを持ちます。
抗ヒスタミン成分
抗ヒスタミン成分は『くしゃみ』『鼻水』『鼻づまり』を緩和する成分です。これらの症状はヒスタミンという物質がヒスタミン受容体にくっつくことで起こりますが、抗ヒスタミン成分はヒスタミンが受容体にくっつくのを抑えることでくしゃみ・鼻水・鼻づまりを緩和します。以下が市販の風邪薬に使用される代表的な抗ヒスタミン成分です。
【代表成分】
・ジフェンヒドラミン塩酸塩
・クロルフェニラミンマレイン酸塩
・クレマスチンフマル酸塩
・ジフェニルピラリン塩酸塩
・カルビノキサミンマレイン酸塩
抗分泌成分
抗分泌成分は抗コリン作用によって鼻水の分泌を抑えます。鼻水は副交感神経から放出されるアセチルコリンという物質が鼻の細胞壁にくっつくことにより鼻腺から分泌されます。抗コリン作用とはこのアセチルコリンが鼻の細胞壁にくっつかないようブロックする働きがあります。以下が市販の風邪薬に使用される代表的な抗分泌成分です。
【代表成分】
・ヨウ化イソプロパミド
・ベラドンナ総アルカロイド
鼻血管収縮成分
鼻血管収縮成分は主に鼻づまりを改善します。鼻づまりの原因として鼻の血管が広がり、鼻の通り道をふさいでしまうことが挙げられます。そのため、血管を収縮させることで鼻の通りを良くし、鼻づまりを改善する目的で配合されています。以下が市販の風邪薬に使用される代表的な鼻血管収縮成分です。
【代表成分】
・プソイドエフェドリン塩酸塩
鎮咳・去痰成分
鎮咳(ちんがい)とは『せき止め』、去痰(きょたん)とは『たんを切る』という意味です。せき止め成分は気管支を広げて咳を止めたり、脳の咳中枢に働いてせきをしずめる効果があります。一方、たんを切る成分はたんの粘性を薄めたり、気道からたんの排出を助ける効果があります。以下が市販の風邪薬に使用される代表的な鎮咳・去痰成分です。
【鎮咳成分】
・dl-メチルエフェドリン塩酸塩
・ジヒドロコデインリン酸塩
・デキストロメトルファン
・ノスカピン
【去痰成分】
・L-カルボシステイン
・アンブロキソール塩酸塩
・ブロムへキシン塩酸塩
・グアヤコールスルホン酸カリウム
・グアイフェネシン
いちばんつらい症状を緩和する風邪薬を選ぼう
市販の風邪薬はさまざまな症状に1つのお薬で対応できます。さらに、かぜのさまざまな症状だけでなくその中でいちばんつらい症状に十分な効果が発揮されるように配合成分や成分量を調整しています。そのため「のどの痛みが1番つらい」「鼻水をなんとかしたい」などご自身のつらい症状に合わせた風邪薬を選ぶことが大切です。ここではつらい症状別に、風邪薬の選び方と代表商品を紹介していきます。
熱がつらい
熱がつらい場合、解熱鎮痛成分と解熱効果を高める生薬を配合した風邪薬が有効です。解熱鎮痛成分はほとんどの風邪薬に配合していますが、解熱効果を高める生薬をプラスで配合した風邪薬は少なく、特に熱がつらい人に適した風邪薬です。
【解熱効果を高める生薬をプラスした風邪薬】
・ルルアタックFXa
・改源
鼻水がつらい
鼻水がつらい場合、抗ヒスタミン成分や抗分泌成分を配合した風邪薬が有効です。基本的にかぜ薬には鼻水を緩和する成分を1成分配合していますが、鼻水を抑えるのに特化した風邪薬には鼻水を緩和する成分を2成分配合した商品が多いです。
【鼻水を抑えるのに特化した風邪薬】
・ストナジェルサイナスEX
・ベンザブロックSプレミアム
・ルルアタックNX
鼻づまりがつらい
鼻づまりがつらい場合には鼻血管収縮成分を配合した風邪薬が有効です。以下が鼻血管収縮成分を配合した代表的な風邪薬になります。
【鼻づまりに特化した風邪薬】
・ベンザブロックLプレミアム
・パブロンメディカルN
喉の痛みがつらい
のどの痛みがつらい場合には解熱鎮痛成分のイブプロフェンと抗炎症成分のトラネキサム酸を配合した風邪薬が有効です。以下がイブプロフェンとトラネキサム酸を配合した代表的な風邪薬になります。
【喉の痛みに特化した風邪薬】
・ベンザブロックLプレミアム
・ストナアイビージェルEX
・コルゲンコーワ IB錠TXα
せきがつらい
せきがつらい場合には鎮咳成分を多く配合した風邪薬が有効です。基本的にかぜ薬には鎮咳成分を1〜2成分配合していますが、以下のせきを抑えるのに特化した風邪薬には鎮咳成分を3成分配合しています。
【せきに特化した風邪薬】
・ストナプラスジェルEX
・ルルアタックCX
・新ルルA錠s
・新ルルAゴールドs
たんがつらい
たんがつらい場合には去痰成分を多く配合した風邪薬が有効です。基本的にかぜ薬には去痰成分を1成分配合していますが、以下のたんを抑えるのに特化した風邪薬には去痰成分を2成分配合しています。
【たんに特化した風邪薬】
・パブロンエースPro
・パブロンSゴールドW
・ストナプラスジェルEX
症状以外の風邪薬の選び方
風邪薬は症状に合わせて選ぶことが基本になりますが、「風邪薬で眠気が出るのが心配」「仕事が忙しいからお昼は薬を飲むのを忘れてしまう」など人によって生活シーンもさまざまですよね。ここでは少しでもニーズに合わせた風邪薬が選べるよう、症状以外の風邪薬の選び方について紹介していきます。
眠気など副作用を避けたい
風邪薬による眠気を避けたい場合は、抗ヒスタミン成分を配合していない風邪薬を選ぶと良いでしょう。抗ヒスタミン成分は主に鼻水やくしゃみを緩和する成分ですが、代表的な副作用として眠気が出ることがあります。以下が抗ヒスタミン成分を配合していない風邪薬です。
【抗ヒスタミン成分を配合していない風邪薬】
・パブロン50
・ストナデイタイム
特にストナデイタイムには抗ヒスタミン成分の代わりに小青竜湯という鼻水やくしゃみに効果のある漢方を配合しています。眠気が心配だけど鼻症状もカバーしたいという方におすすめです。
服用回数を減らしたい
多くの風邪薬は1日3回の服用を基本としています。服用回数を減らしたい場合は1日2回タイプの風邪薬を選ぶと良いでしょう。
【1日2回タイプの代表的な風邪薬】
・プレコール持続性カプセル
・プレコールCR持続性錠
・新コンタックかぜ総合
・新コンタックかぜEX持続性
・ルルアタックTR
常備薬として購入したい
「もしかしたら風邪かも」という時、すぐに服用できるよう常備薬として風邪薬を購入しておきたい方も多いと思います。その場合は前述したつらい症状に特化した風邪薬でなくても問題ありません。つらい症状に特化した風邪薬は値段が高価なものが多く、容量(服用日数)も少ない傾向にあります。そのため値段も比較的安価で容量も多い、常備薬として購入しやすい風邪薬をここでは紹介します。
【常備薬として購入しやすい風邪薬】
・パブロンゴールドA
・新ルルA錠s
・ベンザエースA錠
まとめ
風邪薬はCMやパッケージの『イメージ』で選ぶのでなく、ご自身の一番つらい症状に合わせて選ぶことが大切です。そのためには、つらい症状に効果のある成分が配合された風邪薬かどうかを今回の記事を参考にしっかりと見極めていただけると幸いです。もし購入に迷う場合は薬剤師や登録販売者に相談してみると良いでしょう。
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参考資料
・喉の痛みに効く仕組み/喉(のど)の痛み・腫れを飲んで治す治療薬/「ペラック T錠」/第一三共ヘルスケア
https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/site_pelack/mechanism/
・薬剤師が知っておくべき症状あれこれ[情報をサポート]田辺三菱製薬地域薬剤師・登録販売者サポートネット
https://cps-net.jp/column/alacarte/15006ala.html
・ルル(一覧)/第一三共ヘルスケア
https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/products/brand/lulu/
・ストナの製品/製品検索/薬と健康を見つめる製薬会社 佐藤製薬株式会社
https://search.sato-seiyaku.co.jp/pub/brand/stona/
・製品ラインナップ/ベンザブロック
https://benza.jp/lineup/
・ブランド一覧/大正製薬製品カタログ
https://www.catalog-taisho.com/brand/pabron/
・コルゲンコーワ IB錠TXα/コーワ 健康情報サイト/KOWA
https://hc.kowa.co.jp/otc/13565
・プレコール(一覧)/第一三共ヘルスケア
https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/products/brand/precol/
・製品ラインナップ。風邪、鼻炎、花粉による症状、せきに-効き目のコンタック
https://contac.jp/products/
執筆者 / ファクトチェック / 監修者
Yosuke Fukuoka
【薬剤師】ドラッグストア薬剤師を4年間経験。その後、本社教育部門にて市販薬セミナーの講師を務める。広告やパッケージに惑わされないお薬選びのコツを「わかりやすく」伝えられるよう、日々の執筆を行っています。
Nobuhiro Nagao
病院薬剤師として6年勤務。主にがん領域を経験。
現在は調剤薬局にて経営者かつ薬剤師として地域の健康サポートに取り組んでいます。
また、webライターとしてOTCやセルフメディケーションについて正しい医療情報を発信し、悩みを解消できる記事作成に励んでいます。
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