アセトアミノフェンの副作用や適正使用について|薬剤師視点で注意すべきこと

女性 薬剤師

アセトアミノフェンは、日本だけでなくアメリカやヨーロッパでも解熱鎮痛薬として長い間使われている医薬品成分です。しかしながら、アセトアミノフェンは適切に服用しないと思わぬ副作用を引き起こします。今回はアセトアミノフェンの副作用と服用するときに注意すべきポイントを詳しく解説します。

※今回は難しい内容となっておりますが、新型コロナウイルスのワクチン摂取において「アセトアミノフェン」という名前が浸透しております。皆さんに安全性や副作用について知り、適正に使用してもらうよう記載いたしました。

アセトアミノフェンの特徴

熱のある男性

アセトアミノフェンには解熱・鎮痛作用がありますが、アセトアミノフェンが効果を発揮するメカニズムは完全に解明されていない実情です。現時点では「中枢神経」と呼ばれる部分に働きかけ、解熱・鎮痛作用を示すことが有力だと考えられています。

アセトアミノフェンと似た効果を示す医薬品成分として、ロキソプロフェンを代表とする非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)という言葉を聞いたことがある方は多いと思います。

NSAIDsが効果を発揮する仕組みはアセトアミノフェンと異なり、発熱・痛み・炎症の原因である『プロスタグランジン』と呼ぶ物質の生成を抑えることで効果を発揮します。このメカニズムによってNSAIDsは解熱・鎮痛作用に加え、アセトアミノフェンにはない抗炎症作用があります。

さらに、アセトアミノフェンとNSAIDsのメカニズムの違いから、消化管や腎臓へのダメージやアスピリン喘息など、NSAIDsの特徴的な副作用にアセトアミノフェンでは起こりにくいという特徴があります。

とはいえ、比較的安全だと言われるアセトアミノフェンにも副作用はあります。以降はアセトアミノフェンを安全に使うために注意すべき副作用をみていきましょう。

アセトアミノフェンによる副作用

アセトアミノフェンを服用するときに最も注意すべき副作用は、肝臓の機能が低下する『肝障害』です。他には、体のだるさや吐き気、発赤、めまい、間質性肺炎なども起こることがあります。

どのような原因で副作用が起こるのか

ここでは、アセトアミノフェンの服用によって起こる肝障害のメカニズムを解説します。
(※内容が複雑ですので、詳しく知りたい方はご覧ください)

肝障害を引き起こす直接の原因物質はアセトアミノフェンではなく、アセトアミノフェンが代謝されて体内で産生されるN-アセチル-P-ベンゾキノンイミン(NAPQI)と呼ばれる物質です。

通常、アセトアミノフェンがNAPQIになった後、肝臓で速やかに他の物質へ変わる(グルタチオン抱合)ことで無毒化されますが、以下の3つの状況では体内のNAPQI量が増加する可能性があります。

・アセトアミノフェンの過剰摂取
・アルコールの摂取
・食欲不振

アルコールの摂取は、アセトアミノフェンをNAPQIに変換する酵素を増やす作用があるため,体内でNAPQIの産生量が増加します。また、食欲不振によって十分な栄養が摂れていないとNAPQIを無毒化するために必要なグルタチオンが不足することで、NAPQIが体内に残ってしまいます。

いずれの状態でも、原因物質であるNAQPIの増加がアセトアミノフェンを服用したときに肝障害を引き起こします。

副作用に気づくサイン

疲れている男性

アセトアミノフェンの服用によって肝障害が起きたとき、以下のような症状を感じることがあります。

・発熱・嘔吐
・かゆみ・発疹
・黄疸
・倦怠感
・食欲不振

全ての症状が起きるわけではありませんが、アセトアミノフェンを服用した後に上記のような異変を感じた場合は肝障害が起きている可能性があります。

薬剤師からのポイント

用法用量はしっかり守りましょう

アセトアミノフェンを含有する薬を大量摂取した場合など、肝障害を引き起こす恐れがあります。決められた用法用量を確認して摂取することで、副作用の発生リスクを下げることが可能です。

服用前後の飲酒は避ける

ビール

飲酒をすると、摂取したアルコールによってアセトアミノフェンは肝障害の原因物質であるNAPQIへと変換されやすくなります。アルコールは体内で1時間あたり4g程度代謝されるため、少なくとも飲酒してからアルコールが代謝されるまでの間はアセトアミノフェンの服用を避けましょう。

また、血中に存在するアセトアミノフェンの濃度が1/2になるまでにかかる時間(半減期)は約3時間であり、一般にほぼ全ての薬が血中から消えるのにかかるまでに半減期×5の時間が必要だと考えられています。

そのため、アセトアミノフェンを服用してから『15時間(少なくとも半日)』は飲酒を控えると良いでしょう。

他の解熱鎮痛薬やかぜ薬と併用しない

解熱・鎮痛作用のある市販薬は多くあるため、有効成分の重複には注意しましょう。アセトアミノフェンを大量に摂取してしまうと肝障害をはじめとする副作用を引き起こす可能性が高くなります。

また、医薬品は各々決められた用法用量を守って服用することで適切な効果を発揮するため、多くの市販薬を飲めば早く治るわけではありません。そればかりか副作用が出る危険が増すため、アセトアミノフェンに限らず何種類もの市販薬を併用することは避けましょう。

市販の長期間服用は避ける

アセトアミノフェンを長期間服用することで肝障害を誘発することがあります。特に、アルコール常用者では先ほど述べたように肝障害を引き起こす原因物質の産生量が増加します。アセトアミノフェンを服用しても症状が改善しない場合は、市販薬の長期服用ではなく病院を受診してください。

他にも薬を服用している場合は医師・薬剤師に相談

薬局

既に服用している医薬品の成分が肝臓にダメージを与えていたりアセトアミノフェンの代謝に影響を及ぼすことで、肝障害を引き起こしやすい状態になっている可能性があります。医師からの処方薬や他の症状で市販薬を既に服用している方は、新しく医薬品を入手する前に医師や薬剤師に相談しましょう。
※相談する際は、必ず商品パッケージもしくはお薬の説明文書を持参するようお願いします。

症状の異変に気づいたら医師・薬剤師・登録販売者に相談

アセトアミノフェンを服用した後に既に解説した嘔吐や黄疸などの症状が現れたときはすぐに医師・薬剤師・登録販売者へ相談してください。アセトアミノフェンによる肝障害は重篤化することがあるため、非常に危険です。

また、誤ってアセトアミノフェンを大量に摂取してしまった場合はすぐに病院へ受診をしてください。アセトアミノフェンの用量依存的に肝障害が起こるリスクが高まる一方で、早期に病院へ行くことで適切な治療を受けることができます。

アセトアミノフェンを含有する市販薬

有効成分としてアセトアミノフェンを含む市販薬は多くありますが、今回は3種類の市販薬を紹介します。今回紹介する市販薬は、いずれもアセトアミノフェンのみを有効成分として含む市販薬で頭痛や生理痛などの鎮痛・解熱を目的としてします。

しっかり知識をつけて適正使用に努めましょう。

タイレノールA

タイレノールAは、東亜薬品株式会社が製造販売している市販薬です。1錠あたりアセトアミノフェンが300 mg含まれており、15歳以上が1回1錠・1日3回まで服用できます。

バファリンルナJ

バファリンルナJの製造販売元は、ライオン株式会社です。タイレノールAとは異なり、バファリンルナJには1錠あたり100 mgのアセトアミノフェンが含まれています。含まれている有効成分の量が少ないことで、7歳以上であればバファリンルナJを服用できます。年齢ごとの用法用量は以下の通りです。

・15歳以上:1回3錠・1日3回まで
・11歳以上15歳未満:1回2錠・1日3回まで
・7歳以上11歳未満:1回1錠・1日3回まで
・7歳未満:服用しないこと

ラックル速溶錠

ラックル速溶錠は、日本臓器製薬株式会社が製造販売を行っています。1錠あたりのアセトアミノフェン量と用法用量は、タイレノールAと同じす。ラックル速溶錠の特徴は、名前の通り『すぐに溶け出す』ことです。服用するときにかみ砕く、もしくは口の中で溶かしてから水と一緒に服用します。

まとめ

スマートフォンを見る女性

アセトアミノフェンはよく聞く医薬品成分のひとつですが、使い方を誤ると重篤な副作用を招くおそれがあります。アセトアミノフェンを含む市販薬は正しく使用することで子どもから大人まで幅広い年齢の方が服用できる非常に便利な医薬品であるため、用法用量を守って適切な服用を心がけましょう。

 

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参考資料
・日本ペインクリニック学会
・がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン 2020
・アセトアミノフェン中毒 – 22. 外傷と中毒 – MSDマニュアル プロフェッショナル版
・アセトアミノフェンの長期投与により重症薬剤性肝障害を きたした帯状疱疹後神経痛の 1 例
・アルコールの基礎知識
・アセトアミノフェンによる急性肝不全・急性型の 1 例
・タイレノール®製品情報 – 効能・効果 | Tylenol Japan
・小・中・高校生の生理痛・頭痛にバファリンルナJ 製品紹介|ライオン株式会社
・詳しい製品情報|飲む腰痛薬ラックルの製品情報|腰痛、神経痛にラックル

執筆者 / ファクトチェック / 監修者

Author profile

Ryo Omura

医療編集プロダクションMEDW 代表
株式会社TENTIAL メディアディレクター、リーガルチェック
理念
・誰にでもわかりやすい医療ヘルスケア情報を発信
・医療職の働き方にも自由度を。リモートワーク環境の構築
メディアから医療を変える「デジタルチーム医療」を中心に活動。
スマートなメディア制作を心がけております。

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Nobuhiro Nagao

病院薬剤師として6年勤務。主にがん領域を経験。
現在は調剤薬局にて経営者かつ薬剤師として地域の健康サポートに取り組んでいます。
また、webライターとしてOTCやセルフメディケーションについて正しい医療情報を発信し、悩みを解消できる記事作成に励んでいます。

一緒にセルフメディケーションについて知識を増やしていきましょう。

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