便秘と無縁の生活を送るためには、便秘の根本の原因を取り除く工夫が大事であり、その中でも最も大切なのが「食事」です。便の素は食べ物であり、食べ物を変えることで良い便が作られ腸内環境も整えることができます。
便秘解消のためには、どのような食生活・生活習慣をしたら良いのかお伝えしていきます。
食べ物と便秘の関係性
そもそも、便秘とは『3日以上排便がない状態または毎日排便があっても残便感がある状態』(日本内科学会)と定義づけられています。
便秘になる原因は、「食生活の欧米化(肉・乳製品摂取量増加)」「野菜・穀物摂取の不足」「味噌・漬物・発酵食品の摂取量減量」「ファーストフードの利用」「カフェイン飲料の摂取」「パン食」などの食生活をはじめ、「ストレス」「運動不足」「ストレス」「過度のダイエット」「下剤の乱用」などの生活習慣も深く関わってきます。
特に食生活の乱れは深刻な問題です。現代の日本人の食事では、昔ながらの和食中心の食生活より、肉・牛乳・卵・ヨーグルト・チーズ等の動物性食品を摂るようになり、その結果として野菜や穀類などに多く含まれる食物繊維や、発酵食品に含まれる乳酸菌の摂取量が減量することになってしまいました。
これらの食品には、排便を促し、腸内環境を整える働きがある食べ物ばかりなので、男女問わず便秘で悩んでいる人が増えてきていると言えます。
便秘解消をサポートする食べ物
便秘解消のキーワードは「腸内細菌」です。私たちの腸に住んでいる「腸内細菌」が喜ぶような食事をすると、善玉菌が増え、便秘を解消することができます。
2種類の「食物繊維」
食物繊維とは、「消化吸収されない食物成分」のことです。野菜や穀類に多く含まれています。食物繊維は、便秘の改善はもちろんのこと、肥満、メタボリックシンドローム対策には欠かせません。内側からの「便秘対策」には、まさに必須の栄養素です。生活習慣予防対策の観点から考えると、成人では、食物繊維を24g/日以上摂取するのが理想とされています。
水溶性食物繊維
水溶性食物繊維の特徴
不溶性食物繊維
不溶性食物繊維の特徴
「乳酸菌」で悪玉菌を抑える
乳酸菌は、ビフィズス菌の餌となり善玉菌を増やし、腸内環境を整える働きがあります。また、胃酸で死滅することがないため、生きたまま大腸に届きます。
乳酸菌には、動物性と植物性があり、それぞれ役割が違ってきます。ヨーグルトやチーズなどに含まれる動物性乳酸菌は、胃酸により死滅してしまいますが、死菌として大腸に届き善玉菌のエサになります。一方、キムチ、味噌などに含まれる植物性乳酸菌は、生きたまま大腸にとどき腸内環境を改善します。
どちらかというと、植物性乳酸菌を多く含む食品のほうが、効率よく乳酸菌を腸で働かせる事が出来ます。ただし、60度以上で加熱すると死滅してしまうため、「非加熱」で食べることをオススメします。
「ビフィズス菌」で大腸環境を整える
ビフィズス菌は、大腸の善玉器の99.9%を占めています。悪玉菌を抑え、善玉菌を増やし腸内環境を整える働きがあります。乳酸菌同様に、「生きた菌」を大腸へ行き届かせる方が腸内環境改善の効果が高いといわれています。
「オリゴ糖」で善玉菌を増やす
オリゴ糖には、人間の消化酵素で消化・分解されず、大腸まで生きたまま届くという特性があります。大腸まで届いたオリゴ糖は、善玉菌(特にビフィズス菌)のエサとなり、善玉菌を増殖させ腸内環境を整える働きがあります。
「脂質」が大腸の潤滑剤として働く
脂質の中でも、特に「オリーブオイル」は大腸を刺激し、排便を促す効果を持つ油として知られています。これは、オリーブオイルに多く含まれるオレイン酸の効果です。オレイン酸は、胃や腸でほとんど吸収されることなく、大腸まで届き便を柔らかくしたり、腸の蠕動運動を活発にしてくれる働きがあります。さらに、オリーブオイルは大腸内にとどまり、固くなった便を柔らかくし、排便効果をもたらします。
便秘を引き起こしやすい食べ物
便秘に良い食材を摂取したとしても、便秘の引き金になる食材を摂取していては意味がありません。腸内環境を悪化させる食材に関しても知っておきましょう。
動物性脂肪をたくさん含む「お肉」
動物性脂肪・動物性たんぱく質は腸内の悪玉菌の大好物です。お肉中心の食事に偏っていると、悪玉菌優勢の腸内環境になり、便秘などのトラブルを引き起こす可能性が出てきます。
また、お肉中心の食事だと、野菜が不足して「食物繊維不足」になってしまうことも便秘を引き起こす原因の一つです。
腸の動きを抑制する「タンニン」
お茶、コーヒー、ワインなどに含まれるタンニンには、腸に特殊の被膜をはり、蠕動運動を弱める働きがあります。また、タンニンには便を固くする働きもあるため、固くなった便が腸にとどまり便秘を招くことも一因です。
管理栄養士からのポイント
ここでは、食物繊維をたくさん摂取できるポイントと生活習慣のご紹介をしていきます。
食べ物で便秘は改善できる?
食生活の乱れが原因の便秘に対しては、食べ物を変えることにより便秘が改善されます。
①毎食野菜を100g以上取り入れる
厚生労働省では、1日350g以上(両手を広げてこんもりの量)の野菜摂取量を推奨しています。この量をいっぺんに摂るのではなく、毎食時に分けて取り入れるほうが効果的です。そのため、1食100g以上(片手にこんもり乗る量)を緑黄色野菜・きのこ・海藻類合わせて取り入れましょう。
②良質の脂質を摂る
脂質と聞くと「太る」というイメージがありますが、脂質も重要な栄養源です。エキストラバージンオリーブオイルは酸化しにくく良質な脂質のため、1日大さじ1杯程度取り入れましょう。炒め物・サラダのドレッシングなどに利用すると大さじ1杯はあっという間に摂取できます。
③マグネシウムを摂る
マグネシウムは腸の働きを良くし、便を柔らかくする働きがあります。昆布、ほうれん草、ひじき、納豆、牡蠣、ごま、鰹節、あさりなどに多く含まれているため、これらの食品から1日1食材は取り入れられると良いかと思います。
④ビタミンCを積極的に摂る
ビタミンCは美容だけでなく、腸内の善玉菌を増やし腸内環境を整える働きがあるだけでなく、腸の蠕動運動を活発にすることも知られています。ビタミンCはストレスで大量に消費されるので、ビタミンCが多く含まれている食品は積極的に取り入れましょう。
100g中のビタミンC含有量(㎎)
- 赤ピーマン・・・170
- 芽キャベツ・・・160
- パセリ・・・・・120
- ブロッコリー・・120
- キウイ・・・・・ 69
- いちご・・・・・ 62
⑤肉より魚や大豆でたんぱく質補給
お肉は腸内環境を悪化させる食品のため、便秘の時は魚・大豆製品を中心にした食事を心がけましょう。もし、お肉を食べる多場合は、お野菜はいつもの2~3倍食べるように心がけてみてください。
⑥水分補給
栄養が足りていても、水分が不足していると便が固くなり排便痛を伴うことがあります。こまめに水分補給を心がけましょう。ここでいう水分補給はジュースやコーヒーではなく、お水もしくはお茶のことを指します。
⑦ミントティー
おすすめはミントティーです。ミントは血流を促進し胃腸の働きもよくする働きがあります。さらにリラックス効果もありますので、ストレス性の便秘のかたにも効果的です。
⑧その他生活習慣
食生活だけで改善されない場合は、ストレスや運動不足も関わっている可能性があります。ご自身がリラックスできる入浴やアロマなどで気分転換することもオススメです。
また、腸の蠕動運動が弱い人は、運動も効果的です。腹筋は腹式呼吸、ヨガなどで腸をねじる運動をすると、腸が強制的に動き出し排便効果が得られることがあります。
※注意すべきこと
食物繊維は、1つの食材をたくさん摂取すれば良いということではありません。いろんなお野菜から少しずつ、1食100以上食べるように心がけてみてください。
食物繊維の摂取は2つのバランスが重要
水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の割合は、2対1がよいとされています。この割合より水溶性食物繊維が多くなりすぎると、下痢や腹痛を起こす可能性があります。
逆に不溶性食物繊維の割合が多くなりますと、便の嵩を増やしすぎて大腸でつっかえて、それもまた便秘の原因になりかねます。
そのため、食網繊維をやたらとるのではなく、「バランス」が大切になります。
まとめ
便秘に効く食物繊維を、たくさん食べたからと言って直ぐに改善されるわけではありません。常日頃から、腸に悪い食材を避け、腸が喜ぶような食生活を心がけ、毎日続けていくことが大切になります。
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参考資料
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・中島淳 寿命の9割は「便」で決まる
・松生恒夫 快腸!絶好腸!快便力
・松生恒夫 「便秘」を治す15の法則
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執筆者 / ファクトチェック / 監修者
Yui Yoshisuji
10年間の病院勤務の経歴を生かし、「食を通し、体の内側から美・健康へ導きたい」という想いを掲げ、フリーに転身。体質改善アドバイザーとして、薬膳をベースに一人ひとりの体質に合った、食事の処方箋を提案している。
Ryo Omura
医療編集プロダクションMEDW 代表
株式会社TENTIAL メディアディレクター、リーガルチェック
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