小さなお子さんだけでなく大人になっても、ちょっとしたことでできてしまう擦り傷。正しい処置をしないとばい菌が入ってジュクジュクしたり、傷跡が残ったりすることも。
いままでの常識だった「消毒」や「ガーゼ保護」は実はNG処置だって知っていましたか?今回は最先端の擦り傷の処置方法について、看護師がわかりやすく解説していきます。
擦り傷とは
子どもから大人まで誰でもよく経験する傷のひとつです。皮膚が強くこすれることでできる傷で、切り傷よりも浅い傷がほとんどです。ヒリヒリとした痛みや水がかかるとしみることがあります。
傷ができた原因によっては、傷口で雑菌が繁殖しジュクジュクしたり、深い傷では痕がのこったりします。
擦り傷の処置方法
擦り傷ができると、水で洗い消毒をして、ガーゼで保護するのが常識だと思っていませんか?実は最近の研究で今までの方法では傷の治りが悪く、傷跡が残りやすいことがわかってきたのです。いま、医療現場では「消毒をしない」「ガーゼで覆わない」「乾燥させない」ことが標準治療となっています。
ここでは「消毒しなくても大丈夫なの?」と気になった方のために、消毒の必要性についてご説明していきます。
消毒は必要もしくは不要か
最近の医療業界では「消毒は不要」とされています。もともと人の体には傷をばい菌から守り、異物を除去し、傷ついた組織を綺麗になおす「自然治癒力」が備わっています。
消毒や過剰な洗浄は、ばい菌の侵入を防ぐ好中球やマクロファージを洗い流し、皮膚の治癒を遅れさせてしまうので、消毒はおすすめできません。
看護師からのポイント
すり傷を早く綺麗に治すための3つの秘訣をご紹介します。
消毒をしない
傷ができたら、水で汚れや異物を除去するだけで十分です。傷が治りかけている時期の過剰な洗浄も、回復してきている皮膚を傷つけるので避けるようにしたいですね。
ガーゼで覆わない
ガーゼで傷の表面を乾燥させるのは、おすすめできません。ガーゼ交換のたびに回復している皮膚を剥がしてしまったり、ガーゼが皮膚に細かい傷つける危険性があります。
乾燥させない
傷を乾燥させてしまうと傷の治りが悪くなり、感染をおこしたり、痛みも感じやすくなることがわかっています。被覆材やワセリンを使って、傷を湿潤環境に保っておくことを心がけましょう。
擦り傷に使える処置アイテム
ここでは、擦り傷に使える処置アイテムをご紹介します。
被覆材(ひふくざい)
ガーゼの代わりに皮膚を乾燥させないために、擦り傷用の皮膚保護作用のある、パット・パッチ材を使いましょう。市販品にはたくさんの種類がありますが、傷が全体的に覆える大きさのものを選ぶのがおすすめです。
基本的な交換頻度は「はがれて来たら交換する」ことがポイントです。頻回な交換は治りかけの皮膚を剥がしてしまい、傷の治りを遅らせます。また、浸出液と呼ばれる汁がでる傷の治りかけの時期には被覆材がはがれやすいので、こまめに交換したいですね。
ワセリン
浅くジュクジュクしていない、出血していない擦り傷におすすめです。水でよく洗い、ワセリンを塗ることで被覆材と同じ効果が期待できます。
こんな場合は医療機関へ受診を
浅い傷であれば1週間程度を目安に、新しい皮膚ができてくるのを実感できるでしょう。
ジュクジュクして黄色い膿がつく、臭いがする場合には、ばい菌の感染をおこしてしまっている可能性があります。正しい治療をおこなうことで、早く傷跡が残らずに治すことができます。ぜひ、はやめに医療機関を受診して、擦り傷を早く治していきましょうね。
こちらの記事も読まれています
傷跡のクリーム
ひび割れ・あかぎれに効く市販薬
尿素配合クリームの選び方
参考資料
・創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン―1:創傷一般ガイドライン|日本皮膚科学会
・擦り傷|一般社団法人日本褥瘡外科学会
執筆者 / ファクトチェック / 監修者
Akari Oda
Yosuke Fukuoka
【薬剤師】ドラッグストア薬剤師を4年間経験。その後、本社教育部門にて市販薬セミナーの講師を務める。広告やパッケージに惑わされないお薬選びのコツを「わかりやすく」伝えられるよう、日々の執筆を行っています。