ステロイドと聞くとかゆみやブツブツなど肌トラブルが生じても「大丈夫かな」「危なくないの?」と購入するのに抵抗を感じる方もいるかと思います。
今回はステロイド外用剤「フルコートf」について成分や正しい使用方法、注意点などを解説していきます。また、手足や体、顔など塗っても良い場所についても確認していきましょう。
フルコートfとは
フルコートfは、炎症やかぶれを治療するための塗り薬です。YouTubeやSNSでもよく紹介されているので、ご存知の方も多いかもしれません。ドラッグストアでもフルコートfはよく売れており、指名買いされる方がとても多いです。
フルコートfは、炎症を抑える働きのあるフルオシノロンアセトニドと、菌の繁殖を防ぐフラジオマイシンの2つが主成分として配合されています。
塗り薬には抗炎症成分しか入っていないもの、抗生物質しか入っていないものもあると考えると、どちらも配合されたフルコートfはとても使い勝手が良いと言えるでしょう。
塗り薬は患部の状態に合わせて、クリームタイプもしくは軟膏タイプを使い分けるのが基本です。クリームタイプはカサカサしている患部に、軟膏タイプはジュクジュクとカサカサの両方に使えます。
フルコートfは軟膏タイプの塗り薬なので、ジュクジュクにもカサカサにも使えることがポイントです。
成分の特徴
フルコートfの有効成分とその特徴は以下の通りです。
フルオシノロンアセトニド
フルオシノロンアセトニドは炎症を抑える働きをもち、ステロイドといわれる成分の仲間です。
炎症が起きているとき、体内ではプロスタグランジンやロイコトリエンといった、炎症を引き起こす原因となる物質が多く産生されています。フルオシノロンアセトニドは、これらの物質が作られるのを防ぐ働きがあるので、炎症を抑えることができます。
市販されているステロイド剤の場合、フルオシノロンアセトニドは炎症を抑える働きが強い成分に分類されます。「他の市販薬では効かなかった」「よく効く塗り薬が欲しい」という場合に、候補となりやすい成分でしょう。
フラジオマイシン
フラジオマイシンとはいわゆる抗生物質のことで、菌の増殖を防ぐ成分です。湿疹やかぶれがあると、どうしても皮膚をかきむしってしまうことがあるでしょう。かきむしることで皮膚のバリア機能が落ちるため、普段より菌が繁殖しやすい環境になってしまいます。
菌が増えると化膿して治りが遅くなる恐れがあるので、できるだけ菌の増殖は抑えてあげなければいけません。フラジオマイシンは、患部で菌が繁殖して化膿するのを防ぐことで、症状の悪化を防ぎ、治りを早くするための成分です。
ステロイドの作用の強さについて
ステロイドは効果の強さで5つのランクに分けられています。
1.ストロンゲスト(もっとも強い)
2.ベリーストロング(とても強い)
3.ストロング(強い)
4.ミディアム(普通)
5.ウィーク(弱い)
症状の程度や塗り薬を使う部位によって、適した強さのものを選んで使うことが基本です。たとえば炎症がとても強い場合にはストロンゲスト(使用箇所は限られている)、炎症が中程度で手足や体幹部に使うならストロング、粘膜の近くに使うならミディアムというように使い分けます。
フルコートfの強さは「ストロング」
フルコートfに配合されているフルオシノロンアセトニドは、ちょうど真ん中の「ストロング」に分類される成分です。
市販の塗り薬ではベリーストロングとストロンゲストの成分は販売できない決まりになっているので、ストロングの強さまでの成分しか手に入れることができません。そのためフルコートfは、市販で買えるステロイド剤の中ではもっとも強い成分を含んでいる塗り薬だといえます(2020.06.19現在)。
ストロングランクの薬なので、ひどく炎症を起こしている場合には向いていませんが、よくあるような湿疹やかぶれであれば、十分に対応できると言えるでしょう。
薬剤師からのポイント
顔に塗ってもOK
フルコートfは、顔にも使用できる塗り薬です。市販の塗り薬の多くは「顔には使用しないでください」と注意書きがされているので、顔に使えることはとても大きなメリットとなります。
ただし、目や口の周りは使用できません。また、顔中に湿疹やかぶれがある場合も使えないので注意しましょう。ポツポツと局所的に症状が出ており、なおかつ目や口から離れている場合でしたら顔にも使用できます。
顔や陰部は皮膚が薄いことを知っておこう
身体の部位の中でも顔、陰部、頭皮、わき、背中は皮膚が薄くなっています。
同じ塗り薬を使用しても、皮膚の薄い部位は薬が吸収されやすく薬の影響を受けやすくなります。例えば皮膚の薄い顔の頬や陰部の場合、腕の内側の「薬の吸収しやすさ」を1.0としたときに、顔の頬は13倍、陰部は42倍になります。
薬が吸収されやすいと副作用のリスクも高まる傾向にあります。特に長期間使用した場合、副作用として皮膚が薄くなったり、血管が浮き出て見えるようになることがあります。
フルコートfは局所での作用を目的に開発されたステロイド外用剤であるため、内服剤や注射剤などのステロイド剤に比べると全身へ影響は少なくなっていますが皮膚が薄い顔や陰部は薬の影響を受けやすいことを理解して適正に使用しましょう。
長期間使用しないように
フルコートfに限らず、市販の塗り薬は長期間にわたって使わないようにとされています。長期間使っても症状が改善しない場合、市販の塗り薬では対処できない疾患の可能性が高いため、使用を中断して皮膚科へ受診しましょう。
基本的にステロイド剤は、まず効き目の強いものから使い始め、徐々に弱いものへお薬を変えながら治療していきます(ステップダウン方式)。そのようにすることで症状が広がるのを抑え、効率的に早く治します。
しかし市販のステロイド剤は、ベリーストロングやストロンゲストランク製品の取り扱いがないため、5~6日使っても症状が改善しない場合は、フルコートfの使用を中止し、医療機関を受診しましょう。
塗り方のアドバイス
塗り薬を使うとき、「どのくらいが適量か分からない」と首をかしげる方はとても多いです。使用方法を見ても「適量を患部に塗布してください」としか書かれていないので、迷うこともあるかと思います。
適量とは、患部が薄く塗り薬で覆われる程度の量です。厚塗りによってより効果が得られるわけではないので、必要以上に塗りすぎる必要はありません。
人差し指の先から第1関節まで塗り薬を乗せた量が、手のひら2枚分の面積を塗るのに適していると言われていますので、こちらの量を参考にしてください。
塗る量の他に、「保湿剤や化粧品を使うときは、どちらを先に塗れば良いのか?」という点も気になる方が多いでしょう。フルコートfは基剤が軟膏でできているので、後から保湿剤や化粧品を使うと弾くおそれがあります。そのため、基本的に保湿剤や化粧品は、フルコートfの前に使用しましょう。
フルコートfに関するQ&A
Q.何歳から使用できますか?
A.何歳からとはとくに決まっていませんので、小さなお子様でも使えます。ただし小学生未満の子供に使う場合は、フルコートfよりも弱いステロイド剤を使用した塗り薬のほうが適しています。
Q.使用できない人はいますか?
A.フルコートfの成分にアレルギーがある方、水ぼうそうや水虫には使えません。また患部がひどく化膿していたり、ただれている部位にも使えないので注意してください。
Q.誰でも使用できる?(妊娠中・授乳中も含めて)
A.使用する方にとくに制限はありません。妊娠中や授乳中の使用も問題ないと言われています。ただし長期にわたって使用する場合は、産婦人科で相談の上使用してください。
Q.1日何回塗ればいいの?
A.1日に2~3回が目安です。症状がひどい場合は3回、改善してきたら2回を目安に使用してください。
Q.保湿剤と一緒に使用してもよい?
A.保湿剤と一緒でも使えます。ただし混ぜて使わずに、それぞれ別に使用しましょう。フルコートfを塗った後に保湿剤を塗ると保湿剤の馴染みが悪くなるので、前に使用することがおすすめです。
Q.薬剤師がいないと買えないのかな?
A.フルコートfは薬剤師がいなくても購入できる第二類医薬品です。
Q.ECサイトなどネットで購入することはできる?
A.ECサイトやネットでもお取り扱いがあります。
さいごに
フルコートfは、湿疹やかぶれ、虫刺されやあせもなどに幅広く対応できる塗り薬です。炎症を抑えるステロイドと抗生物質が配合されているので、患部の悪化を防ぎながら治療ができます。市販薬の中では効き目が強いタイプになるため、しっかり治療したい方向けの薬です。
効き目は良いほうではあるものの、症状によってはフルコートfで対応しきれない場合もあります。5~6日使っても症状が改善しない場合は、使い続けずに医療機関を受診しましょう。
参考資料
・「フルコートf」の特長|フルコートf|田辺三菱製薬
・フルコートf
・ステロイド外用薬の薬効の強さは、どのように分類されているの? │ 皮膚Q&A一覧 │ ひふ研 「ひふ症状、ひふ薬の使い方の疑問に答える情報サイト」 │ 第一三共ヘルスケア
執筆者 / ファクトチェック / 監修者
Yosuke Fukuoka
【薬剤師】ドラッグストア薬剤師を4年間経験。その後、本社教育部門にて市販薬セミナーの講師を務める。広告やパッケージに惑わされないお薬選びのコツを「わかりやすく」伝えられるよう、日々の執筆を行っています。
Ryo Omura
医療編集プロダクションMEDW 代表
株式会社TENTIAL メディアディレクター、リーガルチェック
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