あせも(汗疹)は赤ちゃんや子どもがなるものだと思っていませんか?あせもは大人でも起こり得る皮膚の症状です。夏の温度が年々上昇し、汗をかきやすい環境になりかゆみや赤らみなど皮膚症状に悩んでいる方が増えているかもしれません。
今回は大人のあせも(汗疹)に対する市販のあせも治療薬について種類や選び方、治し方を紹介します。
あせも(汗疹)とは
あせもとは大量の汗をかいた際、皮膚に赤いぶつぶつができたり、かゆみを感じたりする症状のことです。汗の通り道(汗管)が塞がって周りの皮膚組織に漏れでることが原因で炎症反応を起こします。そして最終的に皮膚のかゆみや赤み、腫れが引き起こされます。
あせもができやすい場所は、ひじやひざの裏側、首筋、脇などの汗をかきやすいところです。特に大人のあせもは、冬でも厚着をしていたりベルトやゴムで締め付けられた部分に汗をかくことが原因になることがあります。
大人のあせも(汗疹)の原因と治し方
この記事では市販のあせも治療薬を用いた治し方を薬剤師が紹介します。
あせもの原因や日常生活での注意点・治し方などは別記事で看護師が解説していますので、そちらをご覧ください。
大人のあせも(汗疹)に使う市販薬の選び方・治し方
大人のあせも(汗疹)に対して有効的に薬を使用し、炎症を抑えてあげましょう。しかし、薬局においてあるあせもの薬はたくさんあり、どれを購入したら良いか迷ってしまいます。
有効成分や剤形の違いを知り、自分の症状にあった薬を選ぶことが大切です。
抗ヒスタミン薬
抗ヒスタミン薬はアレルギー物質であるヒスタミン※を抑えることでかゆみを防ぎます。代表的な市販薬成分として、ジフェンヒドラミン塩酸塩やクロムフェニラミンマレイン酸塩があります。
飲み薬の抗ヒスタミン薬は眠気の副作用があるものもありますが、塗り薬は局所的な作用を目的としているため、使い方を守れば眠気の副作用が出ることはまずないでしょう。
※ヒスタミンとは、アレルギー物質を感知した際に身体を守るために分泌される物質です。皮膚のかゆみや赤み、腫れを引き起こします。
ステロイド薬
ステロイド薬は、炎症反応の過程を抑えることでかゆみや赤みを防ぎます。抗ヒスタミン薬と違い、炎症反応自体を止めるため、強い抗炎症効果が得られます。即効性もあるためあせも治療の基本となります。
ステロイド薬には強さのランクが5段階あります。弱い方からweak、medium、strong、very strong、strongestの順になります。市販薬にはstrongまでのランクが販売されています。
weak(弱め)
プレドニゾロン、ヒドロコルチゾン酢酸エステル、デキサメタゾン酢酸エステル
medium(中間)
プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル、ヒドロコルチゾン酪酸エステル
strong(強め)
ベタメタゾン吉草酸エステル、フルオロシノロンアセトニド
これらの成分が記載された塗り薬を選びましょう。
赤ちゃん(2歳未満)にはweak、子供(小学生くらいまで)にはmediumランクのステロイドを使用しましょう。赤ちゃんや子供は、strongランクのステロイドを使用してはいけないわけではありませんが、皮膚のバリア機能が未成熟のため、weakやmediumランクのものでもstrongと同様な効果が期待できます。
大人(中学生以上)のあせもにはstrongランクのステロイドを使用することができます。strongのステロイドは大人で肌の強い方の比較的重症度の高いあせもにおすすめです。
抗炎症薬
抗ヒスタミン薬やステロイド薬以外に抗炎症薬として、グリチルリチン酸二カリウム(甘草)が挙げられます。
グリチルリチン酸二カリウムは生薬である甘草(カンゾウ)の成分を主体としていて、炎症を抑え、炎症を起こした肌を改善します。あせもになりそうな時や治った後に使用すると良いでしょう。
その他
その他のあせもの治療薬には、亜鉛華軟膏やリドカインなどが挙げられます。
亜鉛華軟膏は保湿剤に分類され、浸出液を吸収するためじゅくじゅくしているあせもにも使用できます。主に皮膚を保護し、傷の治りを早める効果があります。副作用の発現頻度も低く、赤ちゃんにも使用することができます。
リドカインは局所麻酔作用を持つ成分です。皮膚の炎症やかゆみ、痛みを抑えます。今回紹介した他の成分と一緒に含まれている製品が多くあります。
市販のあせも治療薬の注意点
ステロイド外用剤の強さと使用場所
市販のあせも治療薬は副作用がほぼないものが多いですが、お薬があわないと逆に皮膚が赤くなったり、痛みが出たりする事があります。
また、特にステロイドは長期間使用すると、皮膚の色素が薄くなったり皮膚炎を引き起こしたりすることがあります。特に顔や脇、頭やデリケートゾーンはステロイドの吸収率が高いため、mediumかweakランクのステロイドか、ステロイド以外のお薬を使用しましょう。
掻きむしってしまった場合
あせもができてしまっても、掻かないようにすることが重要です。患部を掻いてしまうと皮膚のバリアーが掻き壊されて細菌が入り込み、感染症を引き起こす原因になってしまいます。
掻いてしまい、傷ができてしまったあせもには抗生物質の含まれた塗り薬を選ぶと効果的です。掻きむしって患部がじゅくじゅくしてしまっている場合はステロイドを使用すると逆効果になる可能性があるため注意しましょう。
軟膏やクリームなど用途ごとに使い分けをする
塗り薬には軟膏、クリーム、ローション、スプレーなどの剤形があり、好みや症状によって使い分けができます。
軟膏
皮膚を保護する白色ワセリンや流動パラフィンをベースにした塗り薬。どのような皮膚状態でも使用できる。べたつきがある。
クリーム
水と油に乳化剤を加えたものをベースにした塗り薬。べたつきが少なく、水で洗い流すことが出来る。
ローション
液体をベースにした塗り薬。体毛のある部分にも使用できるため、頭皮にも塗りやすい。べたつきが少なく、汗でとれやすい。
スプレー
薬の成分を霧状、粉末状などにして患部に噴霧する。手の届きにくい背中や、患部が触ると痛い場合などに使用しやすい。
クリーム、ローション、スプレータイプは刺激性があるため、じゅくじゅくした患部ではなく乾燥した患部に適しています。じゅくじゅくしたあせもには刺激の少ない軟膏タイプを使用しましょう。
まとめ
あせもは、症状の軽いものであれば市販薬で十分対処することができます。自分の症状や使用感の好みに合わせて薬を選択しましょう。この記事がお薬選びの手助けになったら幸いです。
また、あせもは予防することも大切です。汗をかいたあとはすぐタオルで優しく拭いたりシャワーを浴びるなどして皮膚を清潔に保ったり、風通しの良い洋服を着たりして予防することが出来ます。
お薬は必ず用法、用量を守り適切に使用するようにしましょう。また、1週間ほど市販の薬を試しても症状が改善しないときは皮膚科を受診するようにしましょう。
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ステロイドの強さ
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参考資料
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薬剤師国家試験対策参考書改訂版10版 薬理・病態
第29回日本臨床皮膚科医会③シンポジウム6-6 『あせも』の診断と治療のひと工夫
ステロイド外用薬の使い方:コツと落とし穴-JST
執筆者 / ファクトチェック / 監修者
Yosuke Fukuoka
【薬剤師】ドラッグストア薬剤師を4年間経験。その後、本社教育部門にて市販薬セミナーの講師を務める。広告やパッケージに惑わされないお薬選びのコツを「わかりやすく」伝えられるよう、日々の執筆を行っています。
Ryo Omura
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