「キンカン塗って♪ また塗って♪ 」のCMでおなじみのキンカンはかゆみを抑えてくれるイメージが強いのではないでしょうか。しかし、キンカンはかゆみ止めの効果だけではなく、肩こりや捻挫、打撲にも使えます。それぞれ関係のない症状に効くキンカンにはどのような成分が入っているのでしょうか。
今回はキンカンについて成分や特徴について解説していきます。
キンカンとは
キンカンは虫刺されによるやゆみに効果があることはよく知られていますが、肩こりや腰痛、打撲、捻挫にも効果があります。医薬品の分類としては、第2類医薬品の液体タイプの塗り薬です。様々な症状に効く秘密は、配合された成分の組み合わせにあります。
では、どのような成分が配合されているのか見ていきましょう。
成分の特徴
キンカンには、他のかゆみ止めとは異なるユニークな成分が配合されています。それらが複合的に働き、かゆみ止めだけでなく様々な症状に効果を発揮します。配合されているそれぞれの成分の特徴を確認していきましょう。
アンモニア水
鎮痛・鎮痒(かゆみ止め)・消炎作用があります。1~2%で使用することで虫刺されによるかゆみに効果があり、キンカンにはアンモニア水が2%配合されています。
ℓ-メントール
冷感刺激を与え、清涼感が得られる成分です。皮膚に塗るとスーっとする感覚があり、かゆみがスッと和らぐ感覚が得られます。
d-カンフル
ℓ-メントールと同様にスーッとする冷感刺激を与えます。
サリチル酸
炎症や痛みを抑える成分です。また、皮膚を柔らかくする作用もあります。
トウガラシチンキ
皮膚に温感刺激を与える成分です。その刺激によりかゆみや痛みの信号が伝わるのを抑えます。
どのような症状に使える?
虫さされ、かゆみ
虫に刺されると、かゆみや腫れが生じます。これは身体に異物が刺激を与えたときに見られるアレルギー反応です。キンカンは、それぞれの成分が、塗布した部分に局所刺激、冷感刺激、温感刺激を与え、かゆみの伝わりを抑えます。
肩こり、腰痛
肩こりは、筋肉の緊張によって血行が悪くなり、老廃物がたまることによって引き起こされます。また、筋肉の緊張により神経にも負担がかかり、痛みを感じる場合もあります。キンカンは痛みの伝わりを抑制し、和らげるとともに、冷感と温感を繰り返すことで筋肉をほぐし、肩こりを和らげます。
打撲、捻挫
皮膚を刺激することで痛みの伝わりを抑えることで、打撲や捻挫による痛みを一次的に和らげます。しかし、根本的に治療するわけではありませんので、打撲や捻挫がひどい場合は医療機関を受診してください。
薬剤師からのポイント
アルコールが含まれているため敏感肌の方は注意
キンカンにはアルコールが含まれているので、敏感肌や皮膚がアルコールに過敏な方は注意してください。少量で試し、痛みや赤みが持続する場合は、使用を控えた方がよいでしょう。
かゆみを抑える方法が一般的な商品とは違う
他のかゆみ止めとして、ムヒSを例に挙げて解説します。ムヒに配合されているかゆみ止め成分は、ジフェンヒドラミンとグリチルリチン酸と言われる成分を配合しています。ジフェンヒドラミンは、ヒスタミンの働きをブロックすることでかゆみを抑えます。また、グリチルリチン酸には炎症を抑える作用があります。
したがって、ムヒは炎症を抑えると同時にかゆみを起こす経路をブロックすることによりかゆみを抑えます。
一方で、キンカンはこのような作用のある成分は含まれていません。含有成分が複合的に作用して、患部の熱を奪い去り、局所刺激を与えることにより、かゆみや痛みの伝わりを抑制します。これにより、虫さされ、かゆみ、肩こり、腰痛、打撲、捻挫に対して効果を発揮します。
塗り方のアドバイス
まず患部を清潔な状態にしてください。汚れだけでなく、化粧品やほかの薬剤が付着していない状態にすることが重要です。次にキンカンを塗布しますが、立て続けに塗布するのではなく、「塗る→乾かす」を2~3回繰り返してください。また、かぶれる恐れがあるので、完全に乾くまでは衣服やガーゼなどで患部を覆わないように注意してください。
症状がひどい場合は医療機関へ受診
キンカンは塗布した部分に刺激を与え、かゆみや痛みの伝わりを一次的に抑えますが、根本的な治療ができるわけではありません。キンカンを使っても症状が一向に良くならない場合は、医療機関へ受診してください。
塗る場所に注意が必要
キンカンに含まれているトウガラシチンキは強い刺激作用があるので、目の周りや粘膜、かぶれ、傷口では使用しないでください。もし目に入った場合は、すぐに大量の水で洗い流し、症状が改善しない場合は医療機関を受診してください。
キンカンに関するQ&A
Q.何歳から使用できますか?
A.6歳から使用できます。ただし、使用する際は保護者の指導監督のもとに使用させてください。
Q.使用できない人はいますか?
A.使用できない人はしませんが、医師の治療を受けている方、過去にお薬アレルギーを起こしたことがある方、湿疹やかぶれがひどい方、皮膚が特に弱い方は、使用するまでに必ず医師や薬剤師、登録販売者に相談してください。
Q.誰でも使用できる?(妊娠中・授乳中も含めて)
A.妊娠中や授乳中の方も含め、どなたでも使用できますが、医師の治療を受けている方、過去にお薬アレルギーを起こしたことがある方、湿疹やかぶれがひどい方、皮膚が特に弱い方は、使用するまでに必ず医師や薬剤師、登録販売者に相談してください。
Q.1日何回塗ればいいの?
A.1日数回との記載がありますが、1日5~6回ほど塗っても問題ないです。ただし、アンモニア水には刺激作用があるので、過度の使用は避けた方がよいでしょう。
Q.保湿剤と一緒に使用してもよい?
A.これまでにキンカンと保湿剤を一緒に使用して有害事象が起きたとの報告はありませんので、一緒に使用しても問題ないと考えられます。しかし、薬剤に対する感受性は人によって様々なので、異変を感じたら併用を中止し、医師や薬剤師に相談してください。
Q.薬剤師がいないと買えないのかな?
A.キンカンは第2類医薬品に分類されているため、登録販売者からも購入することができます。
Q.ECサイトなどネットで購入することはできる?
A.楽天市場、amazon、マツモトキヨシ・オンラインストアなどインターネットを通じて購入することができます。
さいごに
キンカンに含まれる成分による冷感刺激や温感刺激、抗炎症作用は、虫刺されだけでなく、肩こりや腰痛、打撲、捻挫にも効果が複合的に働く為、様々なシーンで使用されます。6歳以上お子様から大人、妊婦さんまで用法用量をお守り頂ければ、安心して使えるのもありがたいですね。キンカンは昔ながらのお薬なので、多くの家庭に置いているかもしれません。かゆみ止めとしてだけでなく、肩こりや腰痛、打撲や捻挫にも活用してみてはいかがでしょうか。
参考資料
・キンカンの商品情報
・キンカン添付文書
・日本薬局方 アンモニア水
執筆者 / ファクトチェック / 監修者
Yosuke Fukuoka
【薬剤師】ドラッグストア薬剤師を4年間経験。その後、本社教育部門にて市販薬セミナーの講師を務める。広告やパッケージに惑わされないお薬選びのコツを「わかりやすく」伝えられるよう、日々の執筆を行っています。