
塗り薬には軟膏やクリーム、ローションなどさまざまなタイプの商品が販売されています。
「クリームは伸びるから使いやすい」「私は軟膏が好き」など使用感の好みやこだわりがある方もおられるでしょう。
では、軟膏やクリームなど、それぞれ何が違うか説明できますか?なぜクリームは伸びやすいのでしょうか?
この記事では、軟膏、クリーム、ローションについて
を説明します。
商品を選ぶ際に「〇〇だからこのタイプを買おう」など理由を持って買えるとセルフメディケーションのレベルも上がります。
それでは見ていきましょう。
塗り薬とは

塗り薬とは、症状が現れている皮膚(患部)に直接塗って治療する薬のことです。塗り薬はほかにも『外用剤』や『塗布剤』と呼ばれることがあります。
塗り薬の商品はさらに『〇〇軟膏』『〇〇クリーム』『〇〇ローション』などいくつかの種類で販売されていることがあり、みなさんも手に取ってみたことがあるかと思います。
では、それぞれ何が違うのでしょうか?
基剤の意味と役割について
塗り薬は効果を示す『主成分』と塗り薬のベースとなる『基剤(きざい)』でできています。軟膏やクリーム、ローションは『基剤』になります。

例えば、保湿剤のヒルマイルドでは
- ヒルマイルドクリーム
- ヒルマイルドローション


2021年2月に発売された市販薬のリンデロンVsでは
- リンデロンVs軟膏
- リンデロンVsクリーム
のように、同じ主成分で基剤が異なる商品が販売されています。
各種基剤の特徴や構成成分の違い

塗り薬の90%くらいを基剤が占めており、塗り心地や刺激性など使用感に直結します。
そのような基剤の分類は『基剤の構成成分の違い』によって分けられています。
軟膏は油性の基剤
軟膏は油性の基剤です。油性基剤の代表的な成分として、白色ワセリンやプロペトがあります。つまり、〇〇軟膏とは主成分と白色ワセリンに混ぜた商品ということです。(他の成分、他にも添加物など入っていますが今回は割愛します)
実際に、リンデロンVsの添付文書には、
添加物:白色ワセリン、流動パラフィン
と記載されています。
白色ワセリンやプロペトをご存知の方は、イメージがつきやすいでしょう。
軟膏の特徴は、油のため水に溶けにくく肌の保湿力があり、刺激性が弱いことです。べたつきはあるものの、水に流されにくいため患部に留まってくれます。ジュクジュクした患部にも使用できることも軟膏の特徴です。
クリームは油と水分を含む基剤
クリームは油性の基剤に水分が含まれたものです。「油と水だと分離するのでは?」と思いますが、これは界面活性剤によって乳化されています。
身近なものに例えるとマヨネーズを想像してみてください。マヨネーズは食用油(油性成分)と醸造酢(水性成分)を界面活性剤(卵黄)によって乳化されています。マヨネーズは卵黄のおかげで油と水に分離することなく冷蔵庫の中でマヨネーズとしてあり続けています。
クリーム剤は水が含まれた分、軟膏よりもべたつきが少なく、伸びも良いです。一方で水に溶けやすくなるため、水仕事や汗などで流れやすくなります。軟膏に比べて刺激性が強いため、ジュクジュクした患部には適していません。
ローションは水分の多い基剤
ローションは、さらに水分が含まれた基剤になります。クリームタイプ同様、水に溶けやすく流されやすい反面、頭皮など毛で覆われている皮膚など軟膏やクリームでは塗りにくい箇所にはローションが向いています。また、広範囲に使用した場合などは、早く塗ることができることからおすすめです。
どの基剤を選べばいい?症状や使う部位で選ぶ基準
塗り薬は、使う人の症状や使用する部位によって選ぶべきタイプが異なります。以下のポイントを参考にして、最適な基剤を選びましょう。
- 乾燥してカサカサしている皮膚:保湿力の高い軟膏が適しています。特に、ひじ・ひざ・かかとなど乾燥が気になる部分にはおすすめです。
- ジュクジュクした湿疹や傷:水をはじく性質があり刺激が少ない軟膏が効果的です。
- 赤みや炎症があり、かゆみも強い:使い心地のよいクリームが向いています。ただし、ジュクジュクした傷には不向きな場合があります。
- 頭皮や毛の多い部分:塗りやすく広がりやすいローションが使いやすいでしょう。髪の毛にベタつきにくいのもポイントです。
- 広範囲に素早く塗りたいとき:ローションやクリームがおすすめです。のびが良く、作業がスムーズです。
自分の症状と使う場所に合った基剤を選ぶことで、より効果的なセルフケアができます。
軟膏・クリーム・ローションのメリット・デメリット一覧
それぞれの基剤には長所・短所があります。一覧で比較して、自分に合ったタイプを見つけましょう。
種類 | メリット | デメリット |
---|---|---|
軟膏 | 保湿力が高く、刺激が少ない 傷口を保護する | べたつきが気になる 広範囲に塗りにくい |
クリーム | 伸びが良くて塗りやすい 見た目が自然 | 軟膏より刺激がある場合も 汗や水で流れやすい |
ローション | サラッとして塗りやすい 頭皮などにも使える | 乾きやすく保湿力は低め 液だれしやすい |
使用感の好みや生活スタイルも考慮して選ぶと、継続しやすくなります。
塗り薬の効果を高める正しい塗り方とは?
せっかく塗り薬を選んでも、正しい塗り方をしなければ期待通りの効果が得られないこともあります。以下のポイントを押さえましょう。
1. 手を清潔にしてから塗る
手の汚れや菌が患部に移るのを防ぐため、まずは手を洗いましょう。
2. 適量を守る
少なすぎると効果が薄れ、多すぎるとべたつきやムダ遣いに。チューブから出す量の目安は「フィンガーチップユニット(FTU)」で紹介されている場合があります。
3. 擦り込まず、やさしく塗る
ゴシゴシと擦ると皮膚を傷めてしまうことがあります。患部にやさしくのばすように塗りましょう。
4. 頻度と回数を守る
用法・用量は商品ごとに異なります。自己判断で増やしたり減らしたりせず、パッケージや添付文書に従って使用しましょう。
正しく使うことで、塗り薬の効果をより実感しやすくなります。
特徴を活かした商品選びをしましょう

軟膏、クリーム、ローションについて紹介してきました。それぞれの違いがある程度把握できましたでしょうか?
これまで「塗りやすいからクリームが良い」と使っていても、家事などの水仕事やよく汗をかく人だと塗り薬が流されて期待する効果が得られていない可能性があります。それぞれがどのような成分からできているのか、どのような特徴があるのかと知り、自分に合う基剤の商品を選んでいきましょう。
また、この知識を周りの人とも共有して、みんなでセルフメディケーションの力を身に着けていきましょう。
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参考資料
・リンデロンVs添付文書|シオノギヘルスケア
・皮膚用薬の「軟膏」と「クリーム」、何が違うの? │ 皮膚Q&A一覧 │ ひふ研 「ひふ症状、ひふ薬の使い方の疑問に答える情報サイト」 │ 第一三共ヘルスケア
・基礎からわかる外用剤
執筆者 / ファクトチェック / 監修者

Nobuhiro Nagao
病院薬剤師として6年勤務。主にがん領域を経験。
現在は調剤薬局にて経営者かつ薬剤師として地域の健康サポートに取り組んでいます。
また、webライターとしてOTCやセルフメディケーションについて正しい医療情報を発信し、悩みを解消できる記事作成に励んでいます。
一緒にセルフメディケーションについて知識を増やしていきましょう。